怠け者とお殿様 [怠け者シリーズ]
むかし、ある村にひとりの怠け者の若者が住んでいました。
畑を耕しているお父さんもお母さんも、「どうしてこの子は、こんなに怠け者なんでしょうねぇ」と嘆いていました。
ある日、村に若いお殿様が見回りにやってきました。
お殿様は、村中の田んぼや畑、村の人たちの暮らしの様子を見て回りました。
怠け者の若者がいる家に着いた時です。お殿様は「この家は、ずいぶん掃除も行き届き、畑の世話もすばらしい。この家の者にご褒美をやろう。何がよいか?」と父親にたずねました。
父親は、少し言いづらそうにお殿様に言いました。
「もし、お殿様が私どもにご褒美をくださるのなら、息子をお城で働かせてはいただけないでしょうか?」
「よし、わかった。おまえの息子なら安心だ。私の世話係にしよう」とお殿様は言いました。
そんなわけで、怠け者の若者はお城でお殿様のお世話係をすることになりました。お城に行く途中、若者はお城まで歩くのが面倒くさいので「誰か、町まで連れて行ってくれ」と書いた紙を貼って、座っていました。
3年ほどして、かわいそうに思ったお百姓さんが牛に乗せて町の近くまで連れて行ってくれました。そのからも、「誰かご飯を食べさせてくれ」とか「誰か厠(トイレ)に連れて行ってくれ」とか「誰か顔を洗ってくれ」とか「誰か足をもんでくれ」などと、次から次へと誰かの世話になることばかり考えていました。
怠け者がお城にやっと着いたときには、すっかりよぼよぼのおじいさんになっていました。
若かったお殿様も、すっかりおじいさんになってしまっていたのですが、怠け者をわざとこき使って、人をお世話することの大変さを教えました。
今日も怠け者は「誰かお殿様の世話をしてくれ」という張り紙を貼って座っています。
じゃ、おやすみ。
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