タヌキの太鼓にご用心
むかし、ある山にタヌキが住んでいました。
タヌキはいつもおなかをすかしていましたので、「何か食べ物は落ちていないかなぁ」といいながらトボトボと歩いていました。
すると、山の中なのに、チンチン、トントン、チンチン、トントン、と賑やかな音が聞こえてきました。
「何だろう ? こんな山の中でお祭りでもあるのかな ? 」タヌキは不思議に思って近付いていきました。
葉っぱの陰から様子をのぞいてみると、村の人間どもが、大きなイノシシを捕まえて、大喜びの踊りを踊っているところでした。
「なんてやつらだ。動物の敵め」怒ったタヌキは何とかしてイノシシを助けてやろうと考えました。
「♪やったー、やったー。イノシシだぁ。久しぶりのごちそうだぁ」人間たちの踊りはまだまだ続きそうです。
その時、「ポンポコポン、ポンポコポン」と太鼓をたたきながらやってくる男がいました。
「やあやあ、みなさん。イノシシを捕まえましたね。まことにおめでとうございます」
「何だ ? お前は ? 」
「わたくしめはよろこび太鼓隊でございます。皆様のお幸せを祝って、太鼓をたたかせていただきたいと思います」
「そりゃあ、ありがたい。やってくれ。やってくれ」
よろこび太鼓隊の男はさっそく太鼓をたたきだしました。
「ポンポコポン、ポンポコポン」
人間どもの喜びはますます大きくなり、みんな狂ったように踊り続けました。
「ひぃー、ひぃー、助けてくれぇ。踊りがやめらんない」
「ひぃー、ひぃー、誰か踊りを止めてくれぇ」
よろこび太鼓隊の男の太鼓は、ますます激しくなっていきました。そして、
「ざまあみろ。人間ども。」と言って、よろこび太鼓隊の男はイノシシの縄を切りました。
イノシシは、人間どもを蹴散らしながら走って逃げましたが、めちゃくちゃに走ったので、よろこび太鼓隊の男まで蹴っ飛ばしてしまいました。
蹴っ飛ばされた男は、ポコポン ! とタヌキに戻りました。
それと一緒に人間たちも踊りをやめることができました。
「このタヌキの仕業だったんだな」
「タヌキめ。タヌキ汁にしてやる」
タヌキは「動物を大切にしなけりゃ、また出てくるからなぁ」と言いながら山の中に逃げて行きました。
じゃ、おやすみ。
共通テーマ:育児
コメント 0