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川に飛び込んだ少年

ある村にいつも、大暴ればかりしている川が流れていました。
村の人たちがどんなに一生懸命田んぼや畑の世話をしても、川があふれてしまうとすべて食べられなくなってしまいました。
村の人たちは、「困った、困った」と言っては、ため息をついていました。
すると、ある少年が、「俺が川の流れをせき止めて、この村を守る」と言って走り出しました。
みんなは、「バカなことはやめろ ! 」と叫びましたが、少年は川に飛び込んでしまいました。
「あっ ! 」みんなは驚きました。そこに、ふたたびものすごい勢いで川の水が流れてきましたので、少年はあっという間に水に飲み込まれて流されてしまいました。
みんなは大きな声を上げて泣きました。
それから10年経っても、川は暴れてばかり、村はいつも悲しい思いをしていました。
ある日、村の人たちが畑仕事をしていると、川の方から聞いたこともないような大きな音が聞こえてきました。
みんなは怖くて怖くて、物陰に隠れて震えながら様子をのぞいていました。
すると見たこと無いような黒くて大きな船が川を上ってきました。
船には大砲がいくつも付いていました。
村の人たちは「外国の海賊が攻めてきたんだ。なんで、こんな貧しい村なんかを ! 」と思いました。
すると、大きな船は、大砲をごごごごごご、と動かして、どどどーーん、と撃ちました。
村の人たちはすごい音と、恐ろしさで震え上がりました。
どどどーーん、どどどーーん、と大砲の音は何回も続きました。続いて、がらがらがら、と、何かが崩れていく音が響きました。
村の人たちは「もう、この村は、本当に終わりだ」と思いました。すると、
「おおーい。村のみんな。出てきてくれぇ。もう、川が暴れることはないぞぉ」という声が聞こえてきました。
みんなが見ると、見たこともない若者が、船の上から嬉しそうに叫んでいました。
「おれだ。おれだよ。10年前にこの川に飛び込んで流された、おれだよ ! 」
「ええっ ! お前が、あの時の ? 死んだんじゃなかったのか ? 」
「ああ、川の水に流されて、気付いたときは大陸の端っこに流れ着いていたんだ。その国で働いて働いて大もうけをして、この船を買って、村に戻ってきたんだ。見ろ ! 大砲で山を崩して、川を見事にせき止めたぞ ! 」
「おおおおおお」村の人たちは驚きました。山の裾で川はせき止められて、ほどよい小川となって流れていました。
「奇跡だ ! 」「あの少年が10年前に叫んだことは本当だったんだ ! 」「ばんざーい。本当にこの村を救ってくれたんだ ! 」
村の人たちは抱き合って喜びました。
おかげで、村の人たちは心配なくお米や野菜を作ることができるようになり、村はどんどん豊かになりました。そして、川の水が減って動けなくなった船で旅館を始めた男は、村一番の大金持ちになりました。
じゃ、おやすみ。


2012-03-30 09:11  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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