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犬とプチプチ

ある小さな温泉旅館に犬が飼われていました。
この犬はお客さんがくれるプチプチを口でつぶして「プチプチ」と鳴らすのが大好きでした。
その様子がとってもかわいいので、お客さんは次から次へとプチプチを持ってきました。
ところが、ある日から急に、プチプチをあげても、全然嬉しそうな顔をしなくなり、プチプチと音を鳴らすこともしなくなってしまいました。
お客さんたちは、「おかしいなぁ。もう、飽きちゃったのかな ? 」と話しました。
そんな様子を見て、旅館のおかみさんはひっそりと涙を流していました。
実は、この犬には子供がいたのですが、一年前に、その子犬は交通事故にあって死んでしまっていました。
プチプチが好きなのは、本当はこの子犬の方でした。おかみさんがプチプチをあげると子犬は喜んで「ブチブチ」鳴らしていました。その様子を親犬は嬉しそうに見ていたのでした。
でも、子犬は死んでしまいました。子犬が死んだことがわからないのか、子犬がいなくなって3日目ぐらいから、親犬はプチプチをならし始めました。プチプチを鳴らせば子犬が帰ってくると思ったのです。
ですから、お客さんにもらったプチプチを鳴らしている犬を見ると、おかみさんはかわいそうで仕方がありませんでした。
その犬がプチプチを鳴らすのをやめてしまいました。おかみさんは、「あきらめたのか、犬だから子犬のことを忘れてしまったのか」と思って涙を流したのでした。
でも、それは違っていました。
犬はそれからしばらくして、また、子供を産んだのでした。おかみさんも犬も大喜びです。
おかみさんは、また、子犬にプチプチをあげました。今度は子犬も親犬も、一緒になって「プチプチ」音を鳴らして遊びました。
おかみさんは「プチプチを鳴らさなくなったのは、前の子犬との別れの悲しみを乗り越えて、新しい子犬を無事に産むことに心を使っていたのね」と思いました。
今も、この温泉旅館では、「プチプチ、プチプチ」と楽しい音が響いています。
じゃ、おやすみ。


2012-04-05 10:46  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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