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シャボン玉に包まれて [作者のおすすめ]

ある大きな町にひとりの女の子が住んでいました。
女の子はシャボン玉が大好きで、毎日、おうちのすぐ近くの原っぱでシャボン玉を飛ばして遊んでいました。
いつものようにシャボン玉を飛ばして遊んでいたとき、ひとりの若者がポツンとベンチに座っていました。
女の子は、何となく気になって若者に話しかけてみました。
「お兄ちゃん、何しているの ? 」
「何って、ひなたぼっこ かな ? 」若者は小さな声で答えました。
「今日は、学校ないの ? 」
「学校 ? うん、今日はなんかひなたぼっこがしたかったから、休んだんだ」
「そうなんだ。だったら、あたしと遊べるね」
女の子は、若者にシャボン玉をわたしました。
「シャボン玉かぁ。小さいときはよくやったなぁ」若者は少し嬉しそうな顔をしました。
「お祈りしてからやるとね、おっきなシャボン玉ができるんだよ」
「へぇ、そりゃあすごいね。なんてお祈りするんだい ? 」
「なんくるないさぁ。なんくるないさぁ。だよ」
「それって沖縄の言葉だよね」
「うん、パパもママも沖縄から来たんだよ。パパとママはいつもお祈りしてるんだよ」
「そうかぁ。じゃあ、なんくるないさぁ。なんくるないさぁ」
そう言ってから若者はシャボン玉をふくらませました。
シャボン玉のにおいがぷーんとしてきて、若者は何だか懐かしいものに包まれました。
子供の頃、若者は無邪気に遊んでいました。太陽はいつも輝いていましたし、風はいつもいい香りでした。自分が笑えば、いつもニコニコしてくれる父と母がいました。そんな毎日が次から次へと思い出されました。
「お兄ちゃん、すごい ! 」
女の子の声に、はっと気が付くと、シャボン玉はびっくりするくらい大きくふくらんでいました。
女の子がバンザイ、バンザイ、と言うと、女の子はすっかりシャボン玉の中に入ってしまいました。
女の子は大きなシャボン玉の中で嬉しそうにフワフワ浮かんでいました。
シャボン玉はどんどんふくらんで、とうとう若者までシャボン玉の中に入ってしまいました。
二人は、シャボン玉の中で、手をつないで、フワフワ、フワフワと浮かんでいました。周りの光がキラキラと輝き、二人は光の世界に包まれました。
しばらく遊ぶとシャボン玉はパンっと割れました。
原っぱに落ちた二人は、まだ、感動の中にいました。
「お兄ちゃん、すごかったねぇ。お祈りがきいたんだねぇ」
「本当だね。パパとママのお祈りはすごい力があるんだね」
二人はニコニコがとまりませんでした。
「お兄ちゃん、明日も一緒に遊ぼうよ」と女の子が言うと、「いいよ。でも、お兄ちゃん、明日は学校に行ってみることにしたよ。だから、ここに来られるのは夕方だよ」と若者は答えました。
女の子は「お兄ちゃんの顔がキラキラ輝いている」と思いました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-18 10:14  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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