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昭和の写真館 [ちょっと大人向けかな?シリーズ]

ある町に古い写真館がありました。
その写真館に一枚の家族写真が飾られていました。
ある日、少年は野球の練習をした帰り道、一軒の本屋さんに寄り道しました。
本屋さんには「カメラ少年」という本が置いてありました。
少年は、その本を夢中になって読みました。
そんな姿を本棚の陰からこっそりと見ている女の子がいました。
本屋さんの娘でした。
女の子は、本を読みながら目がキラキラしている野球少年が大好きでした。
女の子は、もじもじしながら少年の近くに行き、さりげなく買ったばかりのカメラを見せびらかしました。
カメラに気付いた少年は、「わっ、すごい。カメラ持ってるんだ」と言いました。
女の子は、やはりもじもじしながら、カメラを少年の方に差し出しました。
「えっ ? 貸してくれるの ? 」「うん。カメラ好きなんでしょ ? 」
「すっげえ。本物だ。」少年は本物のカメラにさわるのは初めてでした。
「写してもいいよ」と、女の子が言いました。
「本当に ? どうしよう。何を写そうかな ? 」少年はまわりに素敵な物がないか探しました。でも、まわりは本だらけ。外はもう、薄暗くなっていました。
少年は「じゃ、一枚だけ写真撮らせてもらうよ。生まれて初めて撮る写真だ」と言いました。
次の日、女の子のお父さんは、写真屋さんにフィルムを写真にしてもらいに行きました。そこには、お父さんが今まで見たこともないような嬉しそうな顔をした娘の写真がありました。
女の子のお父さんは、すぐに、写真を撮った野球少年を家に呼んで、一緒にキャッチボールをしました。その時も女の子は今までで一番の笑顔で見つめていました。お父さんも今までで一番の笑顔をしていました。
女の子の家族と野球少年はそれからもずっと仲良く過ごし、大人になったふたりはめでたく結婚しました。
初めての子供が生まれた日、おじいさんになったお父さんは、「みんなで写真を撮りに行こう」と言いました。
その日、家族みんなで写した写真は、あの時と変わらない一番の笑顔がたくさん並んだ写真になりました。
その町の人たちは、この古い写真館の前を通ると、みんな笑顔になりました。
じゃ、おやすみ。


2012-03-28 10:11  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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