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怠け者と和尚様 [怠け者シリーズ]

むかし、ある村にひとりの怠け者の若者が住んでいました。
怠け者の若者は、今日も布団から起き上がるのが面倒なので「誰か掛け布団をはがしてくれ」と書いた張り紙を貼っていました。
それを見た父親は、「息子の怠け癖を治して下さる方はいないだろうか ? 」と思い、村長さんに相談することにしました。
村長さんは「それなら、隣村のえらい和尚様に相談するのがいいだろう。」と教えてくれました。
父親はすぐに隣村に和尚様を迎えに行き、村のお堂で息子と話をしてもらうことにしました。
和尚様は、しばらくは話もせず、怠け者の様子を見ていました。
父親は、はらはらして見ていました。
やっと和尚様が怠け者に言いました。
「あの庭の花をここに持ってきてくれ」
すると怠け者は「誰か和尚様に庭の花を持ってきてくれ」と張り紙を書いて座ったままでした。
和尚様が「お茶を運んできてくれ」と言うと、怠け者は「誰か和尚様にお茶を運んできてくれ。」と張り紙を書きました。
「肩をもんでくれ」と言うと「誰か和尚様の肩をもんでくれ」
「背中をかいてくれ」と言うと「誰か和尚様の背中をかいてくれ」
「汗を拭いてくれ」と言うと「誰か和尚様の汗を拭いてくれ」
怠け者は、自分では何もせずに、誰かに頼む張り紙を書くだけでした。
様子を見ていた父親は、恥ずかしくてすぐに和尚様に謝りに行きました。
すると和尚様は、「お前の息子は、わしが何か頼むとすぐに張り紙を書く」と言いました。
父親は「申し訳ありません。申し訳ありません」と何度も謝りました。
すると和尚様は「いやいや、怒っているのではなく、感心しているのだ」
「お前の息子は何枚も何枚も張り紙を書いたが、最後まで、わしを『和尚様』とちゃんと書いているし、言われたことをすぐに紙に書くのはひとつの才能ではないか。わしには、お前の息子の良いところがすぐにわかったぞ」と言いました。
そして、怠け者に「このお経を書き写してくれ」と長いお経を渡して言いました。
怠け者は1行目に「誰か」と書いて、その長———いお経を最後まで書き写し、最後に「というお経を書き写してくれ」と書きました。
和尚様は少し笑って「最初と最後は紙を貼っておけば仏様も許して下さるじゃろう」と思いました。
和尚様は、それからもいくつもいくつもお経を書き写させました。
怠け者は全部「誰か」と「というお経を書き写してくれ」という言葉の間にお経を書き写しました。
和尚様は怠け者の若者を褒めてあげました。
怠け者の若者は、なんだか嬉しそうな顔をしました。
じゃ、おやすみ。


2023-05-03 11:13  nice!(0)  コメント(0) 
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