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読み上げ版 アメリカクロクマの進化 [作者のおすすめ]
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カナダという国のある島には「アメリカクロクマ」という熊が住んでいますが、なぜかその半分くらいは真っ白な体をしていました。真っ白でも、「クロクマ」でした。
それは、白い熊と黒い熊は、まったく同じ熊で、黒い熊から白い熊が生まれたりするので、区別は出来ないのです。白い猫と黒い猫がいるようなものです。熊は猫の仲間ですし。
言ってしまえば、「アメリカクロクマ」という名前を付けた人がまぬけなのでした。
さて、このアメリカクロクマたちが運動会を始めました。
かけっこをしたり、お魚を誰が一番早く捕まえられるか競争したり、ジャンプの高さで勝負したり、自分たちの体の色を使ってオセロをしたり、泣き声コンテストや、ミスクロクマコンテスト、力自慢大会など、それはそれはいろいろな種目で1位を決めていきました。
その中で、たくさんの1位を取った白い熊と黒い熊が1頭ずついました。
この2頭は最高のチャンピオンを決めようと取っ組み合いの相撲みたいな事を始めました。
みんなは自分の体と同じ色の熊を応援しましたので、いつの間にか黒組対白組に分かれて、大変な盛り上がりになりました。
2頭は抱きついたまま、ゴロンゴロンと転がり始めました。応援していたみんなも、つられてゴロンゴロンと転がり始めました。
あまりにも勢いよく転がったので、カナダを通り越して、ロシアまで転がってしまいました。
それでも、勝負は付かず、とうとうロシアを通り越して中国まで転がってしまいました。そこにある長————いお城にぶつかって、やっとみんな止まることが出来ました。
取っ組み合っていた2頭もあまりの転がりぐあいに「あはははは」と笑いました。
もう1位はどっちでもよくなり、2頭は仲良しになりました。
応援していたみんなも仲良しになりました。
その時には、あんまり長い間取っ組み合って転がってきたので、白い熊と黒い熊は混ざり合って「パンダ」になっていました。
じゃ、おやすみ。
読み上げ版 犬は覚えていた [ちょっと大人向けかな?シリーズ]
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ある町に、目の不自由な子供が住んでいました。
この子の友達は1匹の柴犬だけでした。
子供はいつも柴犬と一緒に同じ道を散歩していました。
ある日、いつものように柴犬を連れて歩いていると、一人の女の人に話しかけられました。
女の人は「この町にTさんって言う人が住んでいるか知ってる ? 」とたずねてきました。
子供は「Tさんなら、僕の家の隣の人だよ」と答えました。
女の人は「まあ、よかった ! Tさんのおうちまで案内してくれるかな ? 」と言いましたので、「いいよ。でもボクはいつも同じ道しか通れないんだ。だから、これからずっと向こうまで歩いてからじゃないとうちには戻らないよ」と言いました。
女の人は「いいわよ。急いでいるわけじゃないし、いっしょに歩きましょ」と言ってついてきました。
歩いている間、女の人は子供にどんな食べ物が好きか、とか、学校は行っているのか、とか、お父さんとは仲良しか、とか、最近楽しいことはあったか、とか、いろいろなことをきいてきました。子供は「ずいぶんといろんなことをきく人だなぁ」と、すこし面倒くさくなってきました。
「もうすぐ、Tさんのうちだよ」と子供が言うと、女の人は最後に「おばあさんとは、仲良くしているの ? 」とききました。
子供は「おばあちゃんなら、去年亡くなりました」と答えました。女の人は、ちょっと立ち止まったようでしたが、子供にすぐに追いついてついてきました。
「ここがボクのうちだから、お隣がTさんのうちだよ」と言いました。
「ありがとう。ぼうや」と言って、女の人はTさんのうちの方へ歩いていきました。
その時、柴犬が女の人の方へ子供を無理矢理連れて行くようにひっぱりました。
びっくりして、子供は「わぁ! 」と言って転んでしまいました。
それでも柴犬は子供を引っ張り続けます。そんなことは初めてだったので子供はどうしていいのかわからなくなり、「えええーん」と泣いてしまいました。
すると、子供はなんだかとても懐かしく、とても軟らかい物に体を包まれました。
驚いて泣き止んだのに、ほっぺたに冷たい涙が落ちてきました。それは、自分を包み込んでいる物が流している涙だとわかりました。
女の人の声が聞こえてきました。
「ごめんね。ごめんね」
「私、おばあちゃんとケンカして5年前にあなたとパパをおいて出て行ってしまったの。ママのこと覚えていないでしょうけれど、もう一度、一緒に暮らしたくて会いに来てしまったの」
子供は嬉しそうに「ママ」と言いました。
「ボクは目が見えないし、小さかったからママのことを覚えてはいないけれど、犬はママのことを覚えていたんだよ。お散歩しているときも、いつもより嬉しそうだなって感じていたんだ、ボク」
子供は、もう一度懐かしくてとっても軟らかい物に包まれました。ママと子供の濡れたほっぺを柴犬がベロっとなめました。
今まで、つらいこともたくさんあった子供でしたが、それからはとても幸せに過ごしました。
じゃ、おやすみ。
読み上げ版 天使の住む庭
自動読み上げソフトに「とっても眠れるお話」を読んでもらいました
どうでしょうか?
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天使の住む庭
ある家の庭に、ひとりの天使が住んでいました。
この家には、おじいさんとおばあさんが住んでいましたが、子供も孫もありませんでした。
おじいさんとおばあさんはお庭の手入れをしながら昔の思い出話などをするのが一日の楽しみでした。
「そう言えば、昔、ばあさんがおなかをこわして困ったとき、この庭のこの辺の葉っぱが急に光り出して、それを飲ませたらおなかが治ったことがあったなぁ」
「そうでしたねぇ。おじいさんがお庭の手入れをしていて手をケガしたときも急に光り出した草を貼ったらすぐに治ってしまったこともありました」
「そうだなぁ。この庭にはすばらしい力があるに違いない」
「わたしたちはこのお庭と一緒に暮らせて、本当に幸せでしたねぇ」
「子供には恵まれなかったが、この家でばあさんといっしょに暮らせて、本当に幸せだったなぁ」おじいさんとおばあさんはうれしそうにそう話しました。
それを聞いた天使はうれしくなって、また何かおじいさんとおばあさんが喜ぶことをしたくなりました。
でも、考えてみると、天使はいつも、おじいさんかおばあさんに困ったことが起こったときにだけ役に立っているのでした。それでは、困ったことが起きないと役に立ちません。困った事なんて起きない方がいいに決まっています。
考えたあげく、天使は決心して自分の体を神様に捧げて、「おじいさんとおばあさんが一番喜ぶことに、私の体を使って下さい」とお願いしました。
神様はその願いをかなえて下さいました。
おじいさんとおばあさんが庭から家の中に戻ろうとしたとき、庭の真ん中の茂みが急に明るく輝き出しました。
おじいさんとおばあさんはびっくりして、「また、何かすばらしいことがおこるのかしら ? 」と言って、ワクワクしながら茂みに近付いていきました。
すると、茂みの中には、たくさんの葉っぱにくるまれた物が光り輝いていました。
おばあさんがのぞき込んでみると、光は静かに消えていきました。
そして、その中に残ったのは、元気に泣き叫んでいる赤ちゃんでした。
おじいさんとおばあさんはしばらく立ちつくしていましたが、あまりの嬉しい出来事に涙を流して喜びました。
それから、三人は素敵な庭に囲まれて、長い間幸せに暮らすことが出来ました。
子供はみんな天使の生まれ変わりです。
じゃ、おやすみ。
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