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星のおはなし [作者のおすすめ]

むかしむかしあるところに1人の女の子が住んでいました。女の子は夜空の星を見るのが大好きでした。むかしむかしのことですからお星様の名前も今とは違っていました。
「こんばんは、むかで座さん。こんばんは、つりがね座さん」という具合です。
女の子は中でも、ねこ座とざぶとん座の話が大好きでした。
それはねこ座のねこがざぶとん座のざぶとんにちょこんと座ると願いがかなうというものでした。
でも、女の子が見上げると、ねこ座が追いかけるとざぶとん座は逃げていく、また、ねこが追いかけるとざぶとんは逃げていくのでした。
そんなある日、女の子のお父さんが大変な病気になり、お医者様もあきらめた顔でした。
女の子も家族もみんな、おいおいと泣きました。
女の子は夜になるとすぐに夜空に向かって「お父さんを助けてください。お父さんを助けてください」とお願いをしました。
すると、なんと、ねこ座のねこがチョコチョコっと歩き出し、ざぶとん座のざぶとんにチョコンと座ったのでした。
女の子はびっくりして、お父さんのところに走っていきました。するとどうでしょう、お父さんは急にぴんぴんに元気になり、「明日は畑に行くぞーー」と叫ぶほどでした。
女の子も家族も、びっくりするやら、よろこぶやら、みんなでお父さんを囲んでニコニコと眠りましたとさ。じゃ、おやすみ。

タグ:病気 星座


2007-03-08 09:18  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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新しい野菜 [作者のおすすめ]

あるところに一匹のあわてんぼうのねずみが住んでいました。このねずみはとても忙しく走り回っていました。畑の中も、目にも止まらぬ速さで走り回り、途中にある野菜も大きく開けた口に入ってくるだけ食べていました。そして、そのままの勢いでうんちをしていたので、よく消化もされず、緑色でコロコロ丸い物が畑いっぱいに落ちていました。
そんな日が何日が過ぎると、「畑に見たこともない物がたくさんある」ということが噂になっていきました。とうとうテレビ局までが取材に来るようになりました。そして、とうとう偉い大学の教授が「まったく新しい野菜を発見」と発表し、「これを食べるととても健康になる」と言ってしまいました。どの会社もこの魔法の健康野菜を販売したくて、この野菜を大金を出して買って行きました。でも、どんなに売っても、次の日にはこの「魔法の野菜」は畑一面に落ちているのでした。
この野菜を食べて元気になった人はたくさんいましたが、肝心のねずみの方は、忙しく走り過ぎて具合が悪くなったとさ。  じゃ、おやすみ。


2007-03-23 22:49  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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消防士さんの気持ち [作者のおすすめ]

むかしむかし、ある町に一人の消防士さんが住んでいました。
消防士さんは火事なんて100年に1回もないこの町で毎日毎日見回りをしていました。
町のみんなは「この町の消防士さんはヒマそうでいいなぁ」なんてよく話していました。
ある風の強い日、あるおじいさんが枯れ葉を燃やしてしまい、その火が風に吹かれて、あっという間におじいさんの家を大きな炎が包んでしまいました。町のみんなはびっくりしたり、おろおろしたり、泣き叫ぶだけでした。消防士さんはそんなみんなに叫びました。「ジュネさんはサキばあさんを背負って河原に運んでくれ。ハジさんとマキさんはリクさんの家にある井戸から水をくんできて。トキさんは自分の家の小屋にある縄をここに持ってきて。ニオさんはマイばあさんの家から斧を持ってきて。キクさんとレンさんは子供たちがここに来ないように見張って……」
消防士さんの大活躍でおじいさんも助け出され、町の人も一人もケガもヤケドもせずに火事の火は消されました。
みんなは「消防士さんが毎日町の見回りをしてくれて、町の全てを知っていてくれたおかげでこの町のみんなは助かった。100年に1回の事のために毎日用心をしてくれていたんだ。どれだけ感謝しても足りない」と言い合いました。
消防士さんは今日も町を見回っています。じゃ、安心してお休み。


2012-02-04 16:55  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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猫に恩返し [作者のおすすめ]

ある村に、一匹の、ものすごく記憶力の良い猫が住んでいました。
たとえば、ある人がこの猫にエサをくれたとします。するとこの猫は、その人のことをいつまでも覚えていて、食べ物に困ったらその人の所を訪ねて「にゃあにゃあ」なきます。
ある人がこの猫に石を投げたりすると、この猫はいつまでも覚えていて、その人の自転車のかごにゴミを入れたりします。
どの家で誕生パーティーがあるかを覚えていて、残り物のご馳走をもらいに行きます。つまり、カレンダーも読めるのです。
ある日、ひとりのおばあさんが道を歩いている途中、急に胸が苦しくなりました。しゃがみ込んで苦しそうに息をしています。それを見た猫は、おばあさんの家から少し離れた、おばあさんの息子の店に走っていきました。そして、店のまんじゅうをくわえました。
「あ、どろぼう猫!待てぇ!」息子は猫を追いかけます。猫はときどき振り返りながら、走っておばあさんのいる方へ向かいました。息子がおばあさんを見つけてすぐに病院に連れて行ったことは想像通りです。猫は安心して、盗んだまんじゅうを店に戻しました。
次の日、いつものように猫が村を散歩していると、村中の家の前に少しずつ、煮干しや焼き魚、かつお節などが置かれていました。猫はなんだか照れくさい気持ちになりましたが、仲間の猫たちに紛れるようにしてかつお節を食べました。村の人たちはいつまでも猫たちを大切にしました。
あの猫の記憶力も今まで通りで、そば屋の電話番号まで覚えているとうわさされています。
じゃ、おやすみ。

タグ: 恩返し


2012-02-12 23:20  nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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一滴の生涯 [作者のおすすめ]

ある日、女の子が足をぶつけてしまって、大きな涙をポロポロこぼしていました。
その涙の中に「一滴」がいました。
「一滴」は女の子の頬を伝ってあごにひっかかりました。女の子のお母さんがなぐさめながらティッシュで「一滴」とその仲間たちをふき取りました。
「一滴」はティッシュにしみこんだまま、ゴミ箱の中に入っていきました。
時間が経ち、「一滴」はだんだん暖かくなってきました。仲間たちはどんどん透明になって空に上っていきました。「一滴」もとうとう、ふわり、と空に上りました。
でも、そこは空ではなく、女の子の家の天井でした。
そこにずいぶん長い時間いたと思ったら、いつのまにか冷たい窓ガラスに近づいていました。
「冷たい!」 「一滴」がそう思ったときには、「一滴」はもう透明ではなく仲間たちとくっついて露になっていました。
また、お母さんが「一滴」たちをふき取りました。今度はティッシュではなくて、もっとごつごつしたものでふき取られました。
そのごつごつしたものがねじねじにひねられると、「一滴」は仲間と一緒に暗〜い管の中を流れていきました。「一滴」は目が回って、しばらく何も覚えていませんでした。
気がつくと大きな海のような所にいました。お日様がサンサンと降り注いで、「一滴」はまた暖かくなって透明になり、空に上っていきました。
今度は、本当に空に着きました。どんどん、どんどん上っていくと大きな町が、遥か向こうまで見えてきました。「きれいだなぁ」と「一滴」は思いました。
それからどれだけの時間がたったのでしょう。「一滴」はちょっと、白っぽいふわふわの体になって空に浮かんでいました。
それから、またどんどん時が経って、ずいぶんと寒い日が続くようになりました。
「一滴」は寒さで体が重たくなってきて、空に浮かんでいるのが大変になってきました。
そして、ある日、とうとう「一滴」は自分の重さに耐えきれなくなって、すとーん、と落ち始めました。どこまで落ちたのか、「一滴」はまた、ふわっと軽くなった気がしました。
ふわふわ、ふわふわ、「一滴」は空の旅を楽しみながら、ゆっくりと町の方に落ちていきました。
「一滴」が落ちたところは女の子のピンク色の手袋の上でした。
「ママ、雪の結晶つかまえた!見て、見て」女の子が「一滴」を部屋の中のお母さんに見せました。
「まぁ、きれい!」
「一滴」は女の子とお母さんにじっと見つめられて頬が赤くなり、恥ずかしがるようにまた透明になって、今度は女の子のまつげにくっつきました。
今も「一滴」は女の子の部屋の中で楽しく暮らしています。
じゃ、おやすみ。

タグ:生涯 結晶


2012-02-18 12:06  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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カワネズミとおばあさんの涙 [作者のおすすめ]

ある美しい川の中にカワネズミが住んでいました。
カワネズミは実はネズミの仲間ではなくて、モグラの仲間です。
でも、モグラみたいに土の中に住んでいるのでもなくて、名前の通り、川の中をまるでビーバーのようにすいすい泳ぎ回っては、アユやイワナなどの魚を手づかみする器用者なのです。
さて、その川に一人のおばあさんがやってきました。
おばあさんはその美しい川の流れをしばらくぼんやりと見ているようでした。
カワネズミは「おばあさんがこの川に来るとは珍しいな」と思って見ていました。
おばあさんは、近くの笹の葉を摘んでは、笹舟を作り、川に流し始めました。
おばあさんは休むことなく笹舟を作り、どんどん、どんどん川に流しました。
カワネズミが不思議に思ってみていると、おばあさんの目から涙がポロポロ、ポロポロと流れていることに気がつきました。
カワネズミには、何が何だかわかりませんでしたが、おばあさんを元気にしてあげなきゃ、と思いました。
そこで、カワネズミは、そっと川の中に入ると、流れてくる笹舟をしっぽでぴょんっと跳ね上げました。次から次へと流れてくる笹舟を次から次へと、ぴょんぴょん、ぴょんぴょん跳ね上げました。
それを見たおばあさんは目をまん丸くして驚きました。
それからカワネズミはイワナを捕まえて、おばあさんの足下にぴょんっと投げました。
何匹も何匹もイワナを捕まえては、おばあさんの足下にぴょんっと投げました。
おばあさんは、またまたびっくりです。
カワネズミは近くの岸に上がっておばあさんの様子を見ていました。
おばあさんは、「死んだおじいさんは、いたずら好きでしたねぇ。こんないたずらをするのはおじいさんに違いない。ふふふふ、おじいさん、あの世に行っても楽しそうだねぇ。おじいさん、ありがとう。何だか元気になってきましたよ」と独り言を言って、嬉しそうにイワナを拾って帰りました。
カワネズミにはわかりませんでしたが、おばあさんが嬉しそうな顔になったので、よかった、よかったと思いました。
それから、何日かおきに、川原におだんごが置かれるようになりました。
カワネズミはおだんごをおいしくいただきました。それが、カワネズミへの贈り物であることは、カワネズミにもすぐにわかりました。なぜなら、そのおだんごは、上手に作った笹舟の中に入っていたからです。
じゃ、おやすみ。

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2012-02-23 22:25  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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青虫の悩み [作者のおすすめ]

ある森の中に、一匹の青虫が住んでいました。
青虫は花粉症でした。
春が近づいてくると、花粉で目がかゆくなり、鼻はむずむずして大変でした。
春はたくさんの葉っぱを食べて大きくならなければならないのに、花粉症の青虫は葉っぱに近づくことも出来ないでいました。
心配した仲間の青虫は青虫大王に裁判をしてもらうことにしました。
青虫大王は花粉症の青虫に言いました。
「おまえは青虫のくせに葉っぱに近づくことも出来ないそうじゃないか。青虫としてはまことに情けない。罰として、今すぐ花粉を10粒食べて見せなさい」
花粉症の青虫は泣きながら言いました。
「そんなぁ、見ただけでも涙が出てくる花粉を食べるなんて無理ですよぉ」
でも、青虫大王はきっぱりと言いました。
「だめだ。いますぐ食べなさい」
大王の命令ですから仕方がありません。青虫は目をつぶりながら花粉をガリガリっと食べました。
するとどうでしょう。噛んでしまえば花粉は何ともありません。
「平気だ !」花粉症の青虫はびっくりして叫びました。
大王は言いました。
「自分が苦手な物から逃げてばかりいるのは間違いなのだ。苦手な物やばい菌のない世界はない。ばい菌とも一緒に生きるのだ。わかったな」
大王のきびしい教えのおかげで青虫は強くなりました。そして、夏を迎える頃には立派な羽を持った大きな蝶になることができました。
青虫が成長した蝶は、自分の羽からまき散らす粉のためにくしゃみをしながら、今日も大空を力強く飛び回っています。
じゃ、おやすみ。

タグ:青虫 花粉症


2012-02-28 11:14  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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おなかの大きなお母さんの活躍 [作者のおすすめ]

ある町におなかの大きなお母さんがいました。
ある日、このお母さんは娘を連れてお買い物に行きました。
すると、お店の前を走っていた男の子の自転車のブレーキが壊れて坂道をどんどん下っていってしまいました。「こわいよぉ。誰かとめてぇ」と男の子は叫びました。
すると、このおなかの大きなお母さんが坂の下にでん、と立ちふさがって、男の子の自転車にぶつかりました。自転車は大きなおなかにあたって、ぼよよよーん、とはずんで止まりました。
「おばさん、ありがとう」男の子はお礼を言いました。
「いいのよ。自転車は気をつけて乗らなきゃダメだよ」とお母さんは言いました。
少し行くと、今度は自動車のブレーキが壊れて、坂道を下っていきました。
「助けてくれー」と運転していた男の人が叫んでいます。
また、このおなかの大きなお母さんが道の真ん中に立ちふさがったので、自動車は大きなおなかにぶつかって、ぽよよよーんと止まりました。
「奥さん、ありがとうございます」男の人も乗っていた女の人と子供もお礼を言いました。
「いいのよ。自動車は気をつけて乗らなきゃダメだよ」とお母さんは言いました。
少し行くと、今度は電車のブレーキが壊れて、どんどん進んできました。
「助けてくれー」と運転手さんは叫びました。
またまた、このおなかの大きなお母さんが線路の上に立って立ちふさがったので、電車は大きなおなかにぶつかって、ぽよよよーんと止まりました。
「ありがとう」「ありがとう。」運転手さんも、電車に乗っていたたくさんの人たちもお礼を言いました。
「いいのよ。電車は気をつけて運転しなきゃダメだよ」とお母さんは言いました。
たまたまこの電車に乗っていた市長さんがいいました。
「ありがとう。あなたのおかげでたくさんの町の人の命が助かったよ。でも、あなたもおなかに赤ちゃんがいるのなら、自分の体を大事にしなきゃダメだよ」と言いました。周りにいたみんなも「そうだよ。そうだよ」と言いました。
するとお母さんは
「大丈夫ですよ。私は、ただ太ってるだけなんですから」と言いました。
それを聞いたみんなは安心して大笑いし、楽しい一日になりました。
じゃ、おやすみ。


2012-03-01 10:37  nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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スズメの涙と幼稚園 [作者のおすすめ]

ある町に、スズメをかわいがっている女の子がいました。
朝にお庭に出て、パンくずをあげると、スズメはチュンチュン言いながら、うれしそうに集まってきました。
その女の子が幼稚園の園庭で遊んでいたときに転んでしまいました。
女の子はエンエン、エンエンと泣いてしまいました。
お友達はみんな心配して集まりました。先生は「大丈夫だよ。すぐにお薬を塗ってあげるからね」と優しく言いました。
でも、先生が薬を塗っても痛いままで、女の子の涙は止まりませんでした。
「困ったわねぇ。お母さんを呼んで病院に連れて行っていただきましょう」
と先生が言ったときでした。
「雨だ」「冷たい」と子供たちが叫びました。
「こんなにお日様が照っているのに?」先生は空を見上げました。
幼稚園の上にはたくさんのスズメが集まっていました。そして、そのスズメはみんな涙をポロポロ、ポロポロと流していたのです。
子供たちと先生は濡れないように園舎の中に戻って外の様子を見ていました。
スズメの涙は本当に小さな小さな粒でした。その粒がたくさんたくさん空から落ちてきて園庭はみるみるうちに濡れていきました。
するとどうでしょう。園庭の土から見たこともないふわふわの草がニョキニョキと生えてきました。
元気な男の子が喜んで園庭に飛び出しました。濡れた草で男の子はスッテーンと転びましたが、全く痛くありません。みんなも園庭に飛び出してスッテーンと転んで遊びました。転んで泣いていた女の子もつられてスッテーンと転んで遊びました。楽しくて夢中になっていたら、ケガをしたこともすっかり忘れてしまいました。
それからも幼稚園の園庭は草でいっぱい。子供たちは転んでもケガをすることもなく、ますます元気な子供に育ちました。
そして、その園庭の真ん中には、子供たちが作ったかわいいパンくず置き場が置かれました。
じゃ、おやすみ。


2012-03-06 10:17  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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真っ暗なスーパーマーケット [作者のおすすめ]

ある大きな町にスーパーマーケットがありました。
このスーパーマーケットはみんなに楽しく買い物をしてもらおうといろいろと工夫をしました。
今日は「真っ暗買い物」の日でした。
「真っ暗買い物」の日は、お店の中が真っ暗で何も見えません。
みんな手探りで「これ、ピーマンだよねぇ」とか「これはお醤油かしらソースかしら?」などと言いながらお買い物をします。値段も見えないのでいくらなのかも全然わかりません。
子供たちも「真っ暗買い物」の日が大好きで、わくわくしながらお母さんと手をつないでお買い物に来ました。
子供たちが欲しいお菓子は、みんな同じようで手探りでは全然わかりません。だからとてもわくわくするのです。
買い物が終わって会場を出ると明るいところに出ます。
そこのレジに並んでやっと、何を買ったのか、いくらなのかがわかるのです。
自分の買いたい物はなかなか買えませんが、そのかわりにこの日はとっても安い値段で売ってくれるので、みんな嬉しい顔をしていました。
カゴの中を見ると「おでんの素」が入っていたので、おかあさんは「今日はおでんだね。」と笑って言いました。
晩ご飯のおでんには、大根やたまごのほかにレタスやたまねぎ、マシュマロまで入っていました。
お父さんは「真っ暗買い物の日は、晩ご飯も楽しいね」と言ってぱくぱく食べました。
男の子は、この日、生まれて初めて「コーラ味のグミ」を食べました。
スーパーマーケットの次のお買い物を楽しみにしながら、みんなはにこにこになりました。
じゃ、おやすみ。


2012-03-07 11:29  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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天使の住む庭 [作者のおすすめ]

ある家の庭に、ひとりの天使が住んでいました。
この家には、おじいさんとおばあさんが住んでいましたが、子供も孫もありませんでした。
おじいさんとおばあさんはお庭の手入れをしながら昔の思い出話などをするのが一日の楽しみでした。
「そう言えば、昔、ばあさんがおなかをこわして困ったとき、この庭のこの辺の葉っぱが急に光り出して、それを飲ませたらおなかが治ったことがあったなぁ」
「そうでしたねぇ。おじいさんがお庭の手入れをしていて手をケガしたときも急に光り出した草を貼ったらすぐに治ってしまったこともありました」
「そうだなぁ。この庭にはすばらしい力があるに違いない」
「わたしたちはこのお庭と一緒に暮らせて、本当に幸せでしたねぇ」
「子供には恵まれなかったが、この家でばあさんといっしょに暮らせて、本当に幸せだったなぁ」おじいさんとおばあさんはうれしそうにそう話しました。
それを聞いた天使はうれしくなって、また何かおじいさんとおばあさんが喜ぶことをしたくなりました。
でも、考えてみると、天使はいつも、おじいさんかおばあさんに困ったことが起こったときにだけ役に立っているのでした。それでは、困ったことが起きないと役に立ちません。困った事なんて起きない方がいいに決まっています。
考えたあげく、天使は決心して自分の体を神様に捧げて、「おじいさんとおばあさんが一番喜ぶことに、私の体を使って下さい」とお願いしました。
神様はその願いをかなえて下さいました。
おじいさんとおばあさんが庭から家の中に戻ろうとしたとき、庭の真ん中の茂みが急に明るく輝き出しました。
おじいさんとおばあさんはびっくりして、「また、何かすばらしいことがおこるのかしら ? 」と言って、ワクワクしながら茂みに近付いていきました。
すると、茂みの中には、たくさんの葉っぱにくるまれた物が光り輝いていました。
おばあさんがのぞき込んでみると、光は静かに消えていきました。
そして、その中に残ったのは、元気に泣き叫んでいる赤ちゃんでした。
おじいさんとおばあさんはしばらく立ちつくしていましたが、あまりの嬉しい出来事に涙を流して喜びました。
それから、三人は素敵な庭に囲まれて、長い間幸せに暮らすことが出来ました。
子供はみんな天使の生まれ変わりです。
じゃ、おやすみ。

タグ: 天使


2012-03-26 08:32  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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世界一高いタワーをささえるもの [作者のおすすめ]

ある町に小さな工場がありました。
この工場で、高校を出たばかりのMが働いていました。Mは、まだ新米なので、いつも怒られてばかりいました。
でも、Mはどんなに怒られても文句を言うことはなく、いつも、一生懸命に仕事を覚えようと努力していました。
そんなMを先輩たちは「まだまだダメだが、こいつはきっといい仕事ができるようになる」と思っていました。
そんなある日、作り始めた世界一高いタワーの部品が間違っていたという事件が起こりました。間違えた部品を作った大きな会社は、大慌てで町中の工場に部品の作り直しを頼みました。
Mの工場でも、明後日までに100万本のネジを作らなくてはならなくなりました。全員が徹夜でネジを作りました。新米のMも部品を運んだり、先輩たちに水を運んだり、おにぎりを運んだり、できあがったネジを箱に詰めたりして、大忙しでした。
そんな時、年をとった先輩のひとりが、疲れ切って倒れてしまいました。Mは先輩を病院に運びました。
残った先輩たちは、倒れた先輩の分も頑張りました。
そして、2日後、100万本のネジが見事にできあがりました。
Mは感動していました。先輩たちの仕事にかける思い、その技術の正確さ、協力し合う姿のすばらしさ。
Mは工場で、どんなつらい仕事も頑張り抜き、やがてその国を代表する技術者になりました。
世界一高いタワーができてから50年がたち、今、Mは新しい世界一高いタワーの工事の責任者になっていました。そのタワーのネジは1000分の1ミリも狂いが無く、美しい姿で建っています。
見上げる人々は「なんて美しいタワーなんだ。」と言い合いました。
Mは、そのタワーのネジの何本かに、お世話になった先輩たちの名前を刻みました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-02 09:45  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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アメリカクロクマの進化 [作者のおすすめ]

カナダという国のある島には「アメリカクロクマ」という熊が住んでいますが、なぜかその半分くらいは真っ白な体をしていました。真っ白でも、「クロクマ」でした。
それは、白い熊と黒い熊は、まったく同じ熊で、黒い熊から白い熊が生まれたりするので、区別は出来ないのです。白い猫と黒い猫がいるようなものです。熊は猫の仲間ですし。
言ってしまえば、「アメリカクロクマ」という名前を付けた人がまぬけなのでした。
さて、このアメリカクロクマたちが運動会を始めました。
かけっこをしたり、お魚を誰が一番早く捕まえられるか競争したり、ジャンプの高さで勝負したり、自分たちの体の色を使ってオセロをしたり、泣き声コンテストや、ミスクロクマコンテスト、力自慢大会など、それはそれはいろいろな種目で1位を決めていきました。
その中で、たくさんの1位を取った白い熊と黒い熊が1頭ずついました。
この2頭は最高のチャンピオンを決めようと取っ組み合いの相撲みたいな事を始めました。
みんなは自分の体と同じ色の熊を応援しましたので、いつの間にか黒組対白組に分かれて、大変な盛り上がりになりました。
2頭は抱きついたまま、ゴロンゴロンと転がり始めました。応援していたみんなも、つられてゴロンゴロンと転がり始めました。
あまりにも勢いよく転がったので、カナダを通り越して、ロシアまで転がってしまいました。
それでも、勝負は付かず、とうとうロシアを通り越して中国まで転がってしまいました。そこにある長————いお城にぶつかって、やっとみんな止まることが出来ました。
取っ組み合っていた2頭もあまりの転がりぐあいに「あはははは」と笑いました。
もう1位はどっちでもよくなり、2頭は仲良しになりました。
応援していたみんなも仲良しになりました。
その時には、あんまり長い間取っ組み合って転がってきたので、白い熊と黒い熊は混ざり合って「パンダ」になっていました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-08 09:38  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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世界で一番大好きな絵 [作者のおすすめ]

5歳の女の子Mちゃんは、お絵かきが大好きでした。
家にいると、いつも紙を広げてはお絵かきをしていました。
ですから、クレヨンは短くなり、サインペンの先はボロボロでした。
お母さんは、Mちゃんの描いた絵をいつも褒めてくれました。
うれしくなったMちゃんは、ますます張り切って絵を描きました。
お母さんは、Mちゃんが描いた絵を1枚残らずデジカメで写真にして大切に残しました。
そんなMちゃんは、大きくなり、美術大学を受験しました。
でも、受験は失敗。Mちゃんは美術大学には進めないことになり、がっかりしていました。
友達が希望の大学に受かったことを知るたびに、なんだか自分がみじめに思えてきました。Mちゃんは泣きそうになりました。
家でも、部屋に閉じこもってしまいました。
お母さんが。「Mちゃん。ごはんできたわよぉ」と呼んだので、Mちゃんは暗い顔をしてテーブルにつきました。すると、ランチョンマットが、Mちゃんが小さいときに描いた絵になっていました。びっくりしてお母さんを見ると、お母さんはいつもと変わらないニコニコの笑顔でMちゃんを見て言いました。「誰がなんと言おうと、お母さんはMちゃんの絵が世界で一番大好きよ。今まで描いてくれた絵は全部デジカメで撮ってあるから、お母さん、全部ネットに載せてみるわ。こんなかわいい絵ですもの。絶対好きになってくれる人がいるに決まってるわ」
お母さんは、Mちゃんの絵をネットに発表しました。
すると、「かわいい」「もっと見たい」というメールが届きました。
Mちゃんはそれを読んで、とてもうれしい気持ちになりました。
そして、とうとう、子供服の会社から「うちの服のキャラクターにしたい」という知らせが来ました。
その服が大ヒットして、今度は絵本を作っている会社から「今度、うちから出す絵本の絵にMちゃんの絵を使わせて欲しい」という申し込みがありました。
一度ヒットすると、その後はたくさんの申し込みがありました。
おもちゃメーカー、文具メーカー、映画会社。
今では、Mちゃんの絵を知らない子供はいないくらいでした。
Mちゃんは今、自分が入りたかった美術大学で先生をしながら、新発売するスマートフォンのキャラクターの絵を考えています。
じゃ、おやすみ。


2012-04-10 08:53  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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桜の花とおばあさん [作者のおすすめ]

Sくんは、「こんなこともあるんだなぁ」と驚いていました。
それは、半年ほど前のことでした。
Sくんは、満開の桜を見に、近くの川岸に行きました。
桜はみごとに咲いていました。たくさんの人たちが桜の花を見に来ていました。
Sくんは風で舞い落ちてきた花びらを楽しそうに拾って遊びました。
ポケットいっぱいに花びらがたまったころ、ひとりのおばあさんが立っていることに気が付きました。
おばあさんはSくんのことをじっと見つめていたのです。
Sくんは、「おばあさん、こんにちは」と挨拶しました。
ちょっと驚いたようにしてから、おばあさんも、「こんにちは、きれいな花が咲きましたねぇ」と微笑みました。
Sくんはお母さんの所へ戻ろうとしました。その時、おばあさんが、「ちょっと待って。そっちの道は川が近くて危ないから、こっちの道を行きなさい」と言いました。
Sくんは、「うん、わかった。じゃあね」と言って、走り出しました。
その後、Sくんはお母さんから、そのおばあさんの話を聞きました。
そのおばあさんがいつもこの川岸に桜を見に来ていること。おばあさんの孫の男の子が10年くらい前に川に落ちて行方不明になってしまったこと。それは、春の嵐と言えるような風の強い日に起きてしまったこと。でした。
Sくんは、「ふーん、ボクは川に落ちたりしないように気をつけて遊びます」と言いました。お母さんはSくんをつよく抱きしめました。
その次の日でした。とても強い南風が吹き、嵐のような音を立てました。
満開だった桜の花は風に飛ばされ、川は桜色の絨毯のようになりました。
Sくんは小学校の帰りに川岸に来ていました。
Sくんは川に落ちた花びらを拾おうと手を伸ばしました。
その時、「危ない ! 」と言って、あのおばあさんがSくんの体を引っ張りました。そして、「川に近づいちゃダメ ! 」と言ってSくんを強く抱きしめました。おばあさんの体がガタガタと震えているのがわかりました。
Sくんは、「おばあちゃん、ごめんね。ボク、絶対に川に落ちたりしないからね」と言いました。
おばあさんは、「絶対に。約束よ」と言って指切りをしました。
それから半年が経った今日、Sくんはお母さんに連れられて、おばあさんのお葬式に行きました。
Sくんは、とても寂しい気持ちでお母さんと歩いて帰りました。
秋の柔らかな日差しが町を包んでいました。Sくんは「おばあちゃんは、孫の男の子に会っているのかなぁ」と思いました。
その時、川岸の桜が咲いていることに気が付きました。
「お母さん ! 秋なのに、桜の花が咲いているよ ! 」Sくんは叫びました。
「本当ね。春にちゃんと咲かないうちに散ってしまった花は、秋にもう一回咲くことがあるって聞いたことがあるわ」とお母さんが言いました。
Sくんは、「こんなこともあるんだなぁ」と驚いていました。
Sくんは「おばあちゃんは、絶対に孫の男の子に会えたんだ」と思いました。
じゃ、おやすみ。

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2012-04-16 08:28  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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シャボン玉に包まれて [作者のおすすめ]

ある大きな町にひとりの女の子が住んでいました。
女の子はシャボン玉が大好きで、毎日、おうちのすぐ近くの原っぱでシャボン玉を飛ばして遊んでいました。
いつものようにシャボン玉を飛ばして遊んでいたとき、ひとりの若者がポツンとベンチに座っていました。
女の子は、何となく気になって若者に話しかけてみました。
「お兄ちゃん、何しているの ? 」
「何って、ひなたぼっこ かな ? 」若者は小さな声で答えました。
「今日は、学校ないの ? 」
「学校 ? うん、今日はなんかひなたぼっこがしたかったから、休んだんだ」
「そうなんだ。だったら、あたしと遊べるね」
女の子は、若者にシャボン玉をわたしました。
「シャボン玉かぁ。小さいときはよくやったなぁ」若者は少し嬉しそうな顔をしました。
「お祈りしてからやるとね、おっきなシャボン玉ができるんだよ」
「へぇ、そりゃあすごいね。なんてお祈りするんだい ? 」
「なんくるないさぁ。なんくるないさぁ。だよ」
「それって沖縄の言葉だよね」
「うん、パパもママも沖縄から来たんだよ。パパとママはいつもお祈りしてるんだよ」
「そうかぁ。じゃあ、なんくるないさぁ。なんくるないさぁ」
そう言ってから若者はシャボン玉をふくらませました。
シャボン玉のにおいがぷーんとしてきて、若者は何だか懐かしいものに包まれました。
子供の頃、若者は無邪気に遊んでいました。太陽はいつも輝いていましたし、風はいつもいい香りでした。自分が笑えば、いつもニコニコしてくれる父と母がいました。そんな毎日が次から次へと思い出されました。
「お兄ちゃん、すごい ! 」
女の子の声に、はっと気が付くと、シャボン玉はびっくりするくらい大きくふくらんでいました。
女の子がバンザイ、バンザイ、と言うと、女の子はすっかりシャボン玉の中に入ってしまいました。
女の子は大きなシャボン玉の中で嬉しそうにフワフワ浮かんでいました。
シャボン玉はどんどんふくらんで、とうとう若者までシャボン玉の中に入ってしまいました。
二人は、シャボン玉の中で、手をつないで、フワフワ、フワフワと浮かんでいました。周りの光がキラキラと輝き、二人は光の世界に包まれました。
しばらく遊ぶとシャボン玉はパンっと割れました。
原っぱに落ちた二人は、まだ、感動の中にいました。
「お兄ちゃん、すごかったねぇ。お祈りがきいたんだねぇ」
「本当だね。パパとママのお祈りはすごい力があるんだね」
二人はニコニコがとまりませんでした。
「お兄ちゃん、明日も一緒に遊ぼうよ」と女の子が言うと、「いいよ。でも、お兄ちゃん、明日は学校に行ってみることにしたよ。だから、ここに来られるのは夕方だよ」と若者は答えました。
女の子は「お兄ちゃんの顔がキラキラ輝いている」と思いました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-18 10:14  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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お母さんが大好き [作者のおすすめ]

ある町に素敵な花屋さんがありました。
この花屋さんはひとりのお母さんが一生懸命続けているお店でした。
女の子は、そんなお母さんを見ながら育ちました。
「お母さんは偉いなぁ。お花の勉強だけでも大変なのに、朝早くから花の仕入れに行って、私の朝ご飯を作ってくれて、お店のお掃除をして、きれいに花を飾って、お店を開いても、ずっとお客さんを待っていなきゃならないし、質問されたら何でもすぐに答えなきゃいけないし、時々配達にも行くし、お昼はひとりで簡単な物しか食べられないし、お店を閉めるにも、花の後始末はとても大変そうだし、晩ご飯に、お風呂の準備、洗濯、掃除、その日のお金の出入りを記録しているし、とにかく大変な1日だなぁ」
そう考えると、女の子は何かお母さんが喜ぶお手伝いをしたくなってきました。
でも、まだ小学生の女の子に出来ることは、あまりありませんでした。
そこで、せめて自分のことは自分でやろうと決めました。
次の日から、自分の食器は自分で洗いました。乾いた洗濯物は自分でたたんで、自分のタンスにしまいました。
そんな女の子の変化を、お母さんはすぐに気付いていました。
しばらくして、小学校で授業参観がありました。女の子のお母さんは、「いつも、お店で、授業参観に行ってあげられなかったけど、今度の授業参観はお店をお休みにして行くわ」と言ってくれました。それを聞いた女の子はワクワクしていました。
授業参観では、子供たちが「将来の夢」という作文をみんなの前で読みました。
女の子は、大きな声で「私の将来の夢は、お母さんと一緒にお花屋さんを頑張ることです」と言いました。
授業参観の帰り道、ふたりは手をつないで帰りました。
お母さんは「今日はお店お休みだから、ふたりで公園に行こう」と言いました。
公園で、女の子はたくさんの花を摘んで、ベンチに並べました。
小さな子がその花を見に来ると、女の子は、「今日はこのお花がおすすめですよ」と言いました。
それを聞いたお母さんは、女の子を強く抱きしめました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-20 19:23  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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頭のいいラッコたち [作者のおすすめ]

アメリカの近くの海に、とっても頭のいいラッコが住んでいました。
ラッコは、おなかの上に石を乗っけて、その石に貝やウニをぶつけて割って食べるというすごい技を持っています。道具を使えるのですから、動物の中でも頭がいいのです。
ラッコたちがどうしてアメリカの近くの海にたくさん住んでいるかというと、ラッコの大好物はアワビなどの貝とウニなのですが、日本だとアワビやウニはとても人気のある食べ物で、海で勝手に取ると警察官さんに捕まってしまうほど大切にされている食べ物なのですが、アメリカ人はウニやアワビを食べません。だから、アメリカの近くの海には、大好物のウニやアワビがたくさんあるのです。ですから、ラッコはアメリカの近くの海にたくさん住んでいるのです。日本やアメリカの食べ物のことまで知っているのですから、ラッコはやっぱり頭がいいのです。
しかも、アメリカの近くの海には「ジャイアントケルプ」というこんぶを長——くした感じの海藻が生えていて、これがラッコが寝るときに体に巻き付けると流されないで済むというとても便利な海藻なのでした。
流されないようにジャイアントケルプを体に巻き付けるなんて、やっぱりラッコは頭がいいですねぇ。
さて、そのラッコたちが住む海に、海賊の船がやってきました。海賊たちは、「この辺の海には、ウニやアワビがゴロゴロあるぜ。根こそぎ取って、日本人に高く売りつければ大もうけだ」と言っています。
海賊たちは大きな網を海におろして、ウニやアワビをどんどん取り始めました。
「うお、ウニもアワビも売るほどありますぜ ! 」
「売るんだから、あたりまえだ」
と海賊たちは間抜けな話をしながら夢中になってウニやアワビを取っていました。
それを見ていたラッコたちは、海賊たちをこらしめる方法を考えました。
ラッコたちはみんなそろって、すぐ近くの海水浴場まで泳いで行きました。
そして、みんな一斉に浜に打ち上げられて、死んだふりをしました。
海水浴場にいた人たちは大騒ぎをして、「大変だ ! ラッコが浜に打ち上げられて死んでしまった ! 」と叫びました。
すぐに警察や救急車が来ました。
すると、警察官が海にいる海賊の船を見つけました。
「なんだ ? あれは ? あれのせいでラッコが死んだのかな ? あんな所で漁をしちゃダメじゃないか。あれ ! よく見るとあれは海賊の印じゃないか ! 」
警察官はすぐに海の警察に連絡しました。
夢中になってウニやアワビを取っていた海賊は、みんな捕まって牢屋に入れられました。
そのころには水族館の人たちも海岸に到着しましたが、ラッコたちは何も無かったかのように嬉しそうに海に帰っていくところでした。
海岸で心配していた人たちは何が何だかよくわからずに、「死んだラッコが、どうして生き返ったんですか ? 」と水族館の人にききました。
水族館の人は笑いながら答えました。
「ラッコは陸の上でも生きられる動物なのですよ。打ち上げられても死ぬことはありませんから、安心して下さい」
それを聞いたひとたちは、「なーんだ。それなら安心。ラッコの方が俺たちより頭がよさそうだ」と言って、笑いながら帰りました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-29 23:28  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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ワオキツネザルの大切な一日 [作者のおすすめ]

ワオキツネザルという動物は、人気のある動物です。
一番の特徴は、名前の通り、長い尻尾が白黒のシマシマになっているところです。顔はキツネみたいなサルですが、見た感じはカンガルーに似た感じです。
さて、ワオキツネザルの小学校がありました。
先生が、「今日は体育で岩山登りに行きます」と言いました。体育の得意な子は「やったー。がんばるぞ」と言い、体育の苦手な子は「うへー、岩登りか、嫌だなぁ」と言いました。
学校のすぐ近くにちょうどいい感じの岩山がありました。
ワオキツネザルの子供たちは「ワオワオ音頭」を歌いながらせっせと登りました。
岩山の途中にはきれいなお花がたくさん咲いていました。そのお花を百本以上摘みながら頂上まで登らないと合格になりませんでした。
頂上で、先生はみんなの花の数を数えさせました。すると、98本の子が2人いましたが、「104本摘んだ子が2本ずつあげなさい。全員合格 ! 」と言いました。
みんなは「ワオ ! 」と喜びました。
頂上で、お母さんが作ってくれたお弁当を食べて楽しい気持ちで学校に戻りました。
学校で先生は子供たちに体育座りをさせて言いました。
「我々は、動物の中で一番体育座りが上手です。それは、小学校で頑張って練習しているからなのです。さあ、あそこに来ているお母さんたちに、みごとな体育座りを見せてあげましょう」
先生が指さした先には、にこにこ顔のお母さんたちが並んでいました。
子供たちは、びっくりしましたが、お母さんの顔を見ると嬉しくなって、にこにこ顔で、一生懸命体育座りを見せました。
お母さんたちは「ワオ ! 」と言って拍手しました。
子供たちは100本の花の花束をお母さんに渡しました。
今日はワオキツネザルの「母の日」なのでした。
じゃ、おやすみ。


2012-05-04 09:45  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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クジラの告白 [作者のおすすめ]

最近の中学生たちは好きな男の子に告白することを「コクる」と言いますが、これは中学生たちだけのことではありません。海に住んでいるクジラにも「コクる」のがとっても得意なクジラがいるのです。
それは名前もそのまんま「コククジラ」と言います。「コクるクジラ」ですから覚えやすい名前ですね。
さて、コククジラの女の子が大好きな男の子コククジラに告白しようとしています。
「今日こそは、勇気を出してコクっちゃうわ。」女の子コククジラはそう決心していました。
男の子コククジラが楽しそうに泳いでいる海に出かけていって、さりげなく男の子コククジラの近くに寄っていきました。
男の子コククジラも気になっているのか、女の子コククジラに近づいたり、ちょっと離れたりして泳いでいました。
女の子コククジラは、「これはチャンスだわ。」と思い、男の子コククジラの体にぴったりと体を押しつけるようにしながら仲良く2匹並んで泳ぎ始めました。2匹は楽しくなって、海面を滑るように泳ぎ始めると、いよいよクジラの得意技、「潮吹き」がしたくなってきました。
女の子コククジラは、いつもよりたくさんの海の水を口から飲み込んで、思いっきり鼻から吹き出しました。
これがコククジラの最高の得意技なのです。コククジラの鼻から飛びだした潮水は、なんと「ハートの形」になるのです。鼻の形が「ハート型」をしているのです。
女の子コククジラが思いっきり吹き上げた潮水は、それはそれは見事な「ハート型」になりました。
それを見た男の子コククジラは少し照れながら、大きく海水を飲み込んでもっと大きなハート型の塩水を吹き上げました。
大きな海には、大きな二つのハートが並んでいました。
じゃ、おやすみ。


2012-08-07 11:50  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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Bくんとおばあちゃんの夏休み [作者のおすすめ]

Bくんは夏休みにおばあちゃんに家に遊びに来ていました。
今年から中学生になったBくんは、初めて一人で列車に乗っておばあちゃんの家まで来たのでした。ですから、列車に乗った時から、もうBくんの特別な夏休みが始まっていたのでした。
おばあちゃんの住む村の近くの大きな町まで2時間も列車に揺られていました。Bくんは今回の旅にはゲームを持って行かないと決めていたので、2時間の間、どうやって時間をつぶそうかと考えました。そして、おばあちゃんにお世話になるのだから、おばあちゃんに手紙を書くことに決めたのでした。列車に乗っている間、Bくんはボールペンで、なるべく丁寧な字で、おばあちゃんに渡す手紙を書き続けました。そのおかげで、2時間という時間も、あっという間に過ぎてしまいました。
その町からおばあちゃんの住む村までは各駅電車に乗り継いで行きました。小さな村の駅を降りると、おばあちゃんはニコニコの顔でBくんのお迎えに来てくれていました。Bくんもニコニコの顔で、「おばあちゃん、遊びに来たよ ! 」と言いました。
Bくんはおばあちゃんの家に着いて、一番最初におばあちゃんの肩もみをしました。おばあちゃんは肩を揉まれながら「極楽。極楽」と言いました。
おばあちゃんがご飯を作ってくれている間にBくんがお風呂を洗ってお湯の準備をしました。おばあちゃんがBくんにご飯を盛ってあげて、Bくんがおばあちゃんの背中を流しました。Bくんが布団を敷いてあげると、おばあちゃんが昔話を聞かせてくれました。
夏休みの間、Bくんはおばあちゃんのためになることを考え、おばあちゃんはBくんが喜ぶことを考えました。
Bくんにとって、とても楽しい夏休みが過ぎていくと、お盆になりました。
ふたりはおじいちゃんのお墓を拝みに行きました。おばあちゃんはとても嬉しそうな、安心したような顔でBくんをみつめていました。
Bくんが家に帰る日、おばあちゃんは駅まで見送りに来てくれました。
Bくんは、「これ、おばあちゃん家に来る時に列車の中で書いたんだ。読んでね」と言って手紙を渡しました。
おばあちゃんは「また、いつでも遊びにおいで」と言っていつまでも手を振ってくれました。
家に帰ってBくんからもらった手紙を見てみると、そこには「おばあちゃんにしてあげたいこと」と書かれていて、「肩を揉んであげる」から始まって、この夏にBくんがしてくれたことが並んで書いてありました。
「こんなにたくさんのことを、おばあちゃんのためにしてくれたんだねぇ」と思うとおばあちゃんは涙が止まりませんでした。
一番最後の行には「おばあちゃんを淋しくさせないこと」と書いてありました。
おばあちゃんは涙を拭こうと洗面台に行きました。
すると、そこには、おばあちゃんがいつも使っているコップの中に、おばあちゃんとBくんの歯ブラシが仲良く入っていました。
おばあちゃんは、「Bくんありがとう。これで、おばあちゃんは全然淋しくなんかないよ」と言いました。
じゃ、おやすみ。


2012-08-21 11:48  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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「こころ」が伝えている [作者のおすすめ]

Fちゃんは12歳の小学校6年生です。
今日はピアノのコンクールのためにお母さんと一緒に大きなホールに来ていました。
ドクン ! ドクン !
突然Fちゃんの心臓が大きく動き出しました。
「お母さん、心臓が……苦しい……」Fちゃんは、そう言ってお母さんにしがみつきました。
意識が遠くなっていく中で、お母さんの叫び声が聞こえました。
「救急車を呼んで下さい ! 救急車を呼んで下さい ! この子は生まれつき心臓が弱くて、2年前に脳死の方から心臓を移植していただいたんです。それからはとっても元気にしていたので安心していたのですが、コンクールの緊張で……」
目の前が真っ暗になって来たと想った時、Fちゃんの心に不思議なものが見えてきました。
それは、ものすごく大きな音楽堂で一人でピアノを弾いている人の姿でした。そのピアノはものすごく上手で、たくさんのお客さんが目を輝かせて聞いていました。その人はピアノの前で踊る様に弾いていたのです。
Fちゃんは、それが自分の体の中の心臓から伝わってくる物だとわかりました。

気が付いたFちゃんは、「おかあさん。もう、大丈夫だよ。ちょっと緊張しちゃっただけだから」とケロリと言いました。
お母さんは、「えっ ? 大丈夫なの ? 」ト拍子抜けした様子でした。
演奏が始まるとFちゃんはピアノの前で踊る様に弾きました。見ていたお母さんもびっくりです。
コンクールに優勝したFちゃんは、たくさんの人の前に出て、堂々と挨拶をしました。
お母さんはFちゃんがあまりにも堂々としていることに驚いていました。
お母さんと二人でニコニコの記念写真を撮った時、Fちゃんの心臓が「どうだ」という感じで「トクン、トクン」と鳴りました。
じゃ、おやすみ。


2012-09-24 08:58  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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イタチのアルバイト [作者のおすすめ]

ある山の中に、ナチュラルゴルフ場というゴルフ場ができました。
大きな山を切り開いて作ったゴルフ場でしたので、なるべく自然のままに作られていました。
この山には、たくさんのイタチたちが住んでいましたが、「なんか、おもしろそうなものができたぞ。」と思っていました。
お客さんが来るようになって、ゴルフが始まりました。人間がやって来るようになって、イタチは何をしているのか知りたくてたまりませんでした。
見てみると、人間は小さな玉を棒で叩いて、なんだか楽しそうにしています。
イタチは思わず走り出して、玉を見に行きました。
お客さんは、「イタチがボールを持って行っちゃうぞ。おーい。ボールを拾っちゃダメだぞぉ」と叫びました。
びっくりしたイタチは玉の隣にちょこんとすわったままどうしたらいいかわからないでいました。すると、お客さんがやってきて、「おお、ボールを見ていてくれたんだな。ありがとうよ」と言ってイタチの頭をやさしくなでなでしてくれました。
イタチは嬉しくなって、それからも玉を追いかけました。
お客さんは「かわいい。かわいい」と言って喜んでくれました。
お客さんが失敗して深い草むらの中にボールを打ってしまっても、イタチがすぐに見つけてちょこんと座っていてくれるので、「イタチちゃんのおかげで、とっても助かるわぁ」と喜ばれました。お客さんが池の中にボールを入れてしまってもイタチがスイスイ泳いで拾ってきてくれるので、お客さんはニコニコしながらゴルフを楽しみました。
その噂はすぐに広まって、テレビのニュースでも紹介されましたので、たくさんのお客さんがナチュラルゴルフ場に来てくれました。
ナチュラルゴルフ場は、他のどのゴルフ場よりもみんながニコニコしてゴルフをしていました。
ゴルフ場の人たちは、「イタチのおかげで大人気だ」と言って「イタチのエサ代募金箱」を置いてくれました。お客さんたちは、「今日もイタチちゃんのおかげで楽しかったわぁ」と言って、募金箱にお金を入れてくれました。
そのおかげで、イタチは朝晩、おいしいエサをゴルフ場の人たちからもらえるようになりました。
いつの間にか、働くイタチは10匹20匹と増えていき、お客さんもどんどん増えていきました。
それを見て、タヌキもキツネもイタチの手伝いに来てくれました。
お客さんも、ゴルフ場の人も、動物たちも、みんながニコニコしていました。
イタチは「人間と動物が仲良くして行けたら、みんながニコニコになるんだなぁ。」と思いました。
じゃ、おやすみ。


2013-01-06 12:16  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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頬を過ぎる風 [作者のおすすめ]

 Kは中学2年生だが、この頃少し「いじめられっ子」になりかけている。
クラスでは一緒にお昼を食べる友達もいるし、仲間はずれにされて淋しい思いをしているという程ではない。けれど、体の大きなクラスメートに時々からかわれたり、目の前でペンケースに消しゴムのカスを入れられたりした。
 幸い、誰かわからない人にイタズラされたり、陰でこそこそと悪口を言われたりはしていない。面と向かっていじめられているのだ。それは「誰に何をされるかわからない。」という恐怖感を抱かなくていいだけ気楽だった。
 Kは学校から自転車で帰って行く。帰りはずっと下り坂で、登校時の苦労に比べなくてもそれは楽ちんなことだった。Kはこのさっさと帰れる下り坂が大好きだった。
 この日、Kはいつものように、さっさ、と家に帰るつもりでいた。ところが、いつも通るこの道の途中で、なぜかお寺の前の掲示板が気になって自転車を止めた。
 そこには「常不軽菩薩の話」と書かれた紙が一枚貼られていた。
 その話は、Kにとって少し興味を引く話だった。

 いつもより少しだけ遅く家に帰ったKはすぐに部屋にこもったが、母親は特に気にも止めなかった。
 Kはネットで「常不軽菩薩」を調べていた。
  「常不軽菩薩」じょうふぎょうぼさつ
  「法華経」に説かれる菩薩。棒で叩かれたり、つつかれたり、石を投げられたり
  しても、「そんなあなたにも仏の種が宿っているのです。」
  と言い、全ての人に頭を下げ続けた。その行により、菩薩の位を得、「常不軽菩
  薩」となった。
 Kは、なんとなくだが、この話の意味が心にすーっと入ってくるのを感じていた。

 次の日、Kは学校でからかわれた時に、「まいったなぁ。」という顔でにこやかに笑ってみせた。チョークを軽く投げつけられた時も、「痛てててて。」みたいな感じでにこにこしてみせた。クラスメートは特に反応はなかったが、怒るわけでもなく、しつこくいじめるでもなく、何もなかったかのように席に着いたりした。
 Kの試みはずっと続けられた。
「常不軽菩薩」は菩薩になるまでいじめられたようだったが、Kはだんだんいじめられなくなっていった。
 Kは、以前に比べて別人のようににこやかな顔になっていた。すると、いじめもどんどん減って行き、お昼を食べているKのグループにたわいもなく話しかけてきてくれるクラスメートも出てきた。
 なんだか、Kのクラス全体がにこやかになってきた気がした。

 定期テストが終わったある日、担任の先生が嬉しそうな顔で、「この前のテストは、みんなずいぶん成績が上がったぞ。」と言った。それを聞いたクラスのみんなもにこやかだった。成績が上がるとなぜかみんないじわるしなくなった。
Kは「みんなも何かに不安を感じたりしているだけなんだな。誰のこころにも「いい種」が宿っているんだ。」と思った。

 「お釈迦様は2500年も前の人か。ずいぶんと昔の人にいいこと教えられたなぁ。」

 お釈迦様に限らず、昔の人はずいぶんといい話を残してくれているんだな。いや、いい話だからずっと残っているんだな。

 Kはひとり、わかったような顔をして坂を下って行った。

 家に帰ると、母親が「チーズケーキ買ってきたよ。食べる ? 」とほほえんだ。
 母親とありきたりな話をしながら、Kはますます笑顔になっていた。

じゃ、おやすみ。


2013-10-28 21:38  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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一滴の生涯 [作者のおすすめ]

ある日、女の子が足をぶつけてしまって、大きな涙をポロポロこぼしていました。
その涙の中に「一滴」がいました。
「一滴」は女の子の頬を伝ってあごにひっかかりました。女の子のお母さんがなぐさめながらティッシュで「一滴」とその仲間たちをふき取りました。
「一滴」はティッシュにしみこんだまま、ゴミ箱の中に入っていきました。
時間が経ち、「一滴」はだんだん暖かくなってきました。仲間たちはどんどん透明になって空に上っていきました。「一滴」もとうとう、ふわり、と空に上りました。
でも、そこは空ではなく、女の子の家の天井でした。
そこにずいぶん長い時間いたと思ったら、いつのまにか冷たい窓ガラスに近づいていました。
「冷たい! 」 「一滴」がそう思ったときには、「一滴」はもう透明ではなく仲間たちとくっついて露になっていました。
また、お母さんが「一滴」たちをふき取りました。今度はティッシュではなくて、もっとごつごつしたものでふき取られました。
そのごつごつしたものがねじねじにひねられると、「一滴」は仲間と一緒に暗〜い管の中を流れていきました。「一滴」は目が回って、しばらく何も覚えていませんでした。
気がつくと大きな海のような所にいました。お日様がサンサンと降り注いで、「一滴」はまた暖かくなって透明になり、空に上っていきました。
今度は、本当に空に着きました。どんどん、どんどん上っていくと大きな町が、遥か向こうまで見えてきました。「きれいだなぁ」と「一滴」は思いました。
それからどれだけの時間がたったのでしょう。「一滴」はちょっと、白っぽいふわふわの体になって空に浮かんでいました。
それから、またどんどん時が経って、ずいぶんと寒い日が続くようになりました。
「一滴」は寒さで体が重たくなってきて、空に浮かんでいるのが大変になってきました。
そして、ある日、とうとう「一滴」は自分の重さに耐えきれなくなって、すとーん、と落ち始めました。どこまで落ちたのか、「一滴」はまた、ふわっと軽くなった気がしました。
ふわふわ、ふわふわ、「一滴」は空の旅を楽しみながら、ゆっくりと町の方に落ちていきました。
「一滴」が落ちたところは女の子のピンク色の手袋の上でした。
「ママ、雪の結晶つかまえた!見て、見て」女の子が「一滴」を部屋の中のお母さんに見せました。
「まぁ、きれい! 」
「一滴」は女の子とお母さんにじっと見つめられて頬が赤くなり、恥ずかしがるようにまた透明になって、今度は女の子のまつげにくっつきました。
今も「一滴」は女の子の部屋の中で楽しく暮らしています。
じゃ、おやすみ。

タグ:一滴 水滴


2021-01-25 12:21  nice!(0)  コメント(0) 
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アメリカクロクマの進化 [作者のおすすめ]

カナダという国のある島には「アメリカクロクマ」という熊が住んでいますが、なぜかその半分くらいは真っ白な体をしていました。真っ白でも、「クロクマ」でした。
それは、白い熊と黒い熊は、まったく同じ熊で、黒い熊から白い熊が生まれたりするので、区別は出来ないのです。白い猫と黒い猫がいるようなものです。熊は猫の仲間ですし。
言ってしまえば、「アメリカクロクマ」という名前を付けた人がまぬけなのでした。
さて、このアメリカクロクマたちが運動会を始めました。
かけっこをしたり、お魚を誰が一番早く捕まえられるか競争したり、ジャンプの高さで勝負したり、自分たちの体の色を使ってオセロをしたり、泣き声コンテストや、ミスクロクマコンテスト、力自慢大会など、それはそれはいろいろな種目で1位を決めていきました。
その中で、たくさんの1位を取った白い熊と黒い熊が1頭ずついました。
この2頭は最高のチャンピオンを決めようと取っ組み合いの相撲みたいな事を始めました。
みんなは自分の体と同じ色の熊を応援しましたので、いつの間にか黒組対白組に分かれて、大変な盛り上がりになりました。
2頭は抱きついたまま、ゴロンゴロンと転がり始めました。応援していたみんなも、つられてゴロンゴロンと転がり始めました。
あまりにも勢いよく転がったので、カナダを通り越して、ロシアまで転がってしまいました。
それでも、勝負は付かず、とうとうロシアを通り越して中国まで転がってしまいました。そこにある長————いお城にぶつかって、やっとみんな止まることが出来ました。
取っ組み合っていた2頭もあまりの転がりぐあいに「あはははは」と笑いました。
もう1位はどっちでもよくなり、2頭は仲良しになりました。
応援していたみんなも仲良しになりました。
その時には、あんまり長い間取っ組み合って転がってきたので、白い熊と黒い熊は混ざり合って「パンダ」になっていました。
じゃ、おやすみ。


2021-05-30 08:14  nice!(0)  コメント(0) 
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世界一高いタワーをささえるもの [作者のおすすめ]

ある町に小さな工場がありました。
この工場で、高校を出たばかりのMが働いていました。Mは、まだ新米なので、いつも怒られてばかりいました。
でも、Mはどんなに怒られても文句を言うことはなく、いつも、一生懸命に仕事を覚えようと努力していました。
そんなMを先輩たちは「まだまだダメだが、こいつはきっといい仕事ができるようになる」と思っていました。
そんなある日、作り始めた世界一高いタワーの部品が間違っていたという事件が起こりました。間違えた部品を作った大きな会社は、大慌てで町中の工場に部品の作り直しを頼みました。
Mの工場でも、明後日までに100万本のネジを作らなくてはならなくなりました。全員が徹夜でネジを作りました。新米のMも部品を運んだり、先輩たちに水を運んだり、おにぎりを運んだり、できあがったネジを箱に詰めたりして、大忙しでした。
そんな時、年をとった先輩のひとりが、疲れ切って倒れてしまいました。Mは先輩を病院に運びました。
残った先輩たちは、倒れた先輩の分も頑張りました。
そして、2日後、100万本のネジが見事にできあがりました。
Mは感動していました。先輩たちの仕事にかける思い、その技術の正確さ、協力し合う姿のすばらしさ。
Mは工場で、どんなつらい仕事も頑張り抜き、やがてその国を代表する技術者になりました。
世界一高いタワーができてから50年がたち、今、Mは新しい世界一高いタワーの工事の責任者になっていました。そのタワーのネジは1000分の1ミリも狂いが無く、美しい姿で建っています。
見上げる人々は「なんて美しいタワーなんだ」と言い合いました。
Mは、そのタワーのネジの何本かに、お世話になった先輩たちの名前を刻みました。
じゃ、おやすみ。


2021-07-09 22:12  nice!(0)  コメント(0) 
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小さな命 [作者のおすすめ]

小さな小さな女の子が生まれました。
お父さんとお母さん、おじいちゃんとおばあちゃんもみんな大喜びでした。
でも、女の子は生まれつき心臓に病気を持っていました。
お医者さんは、「この子の体力では、1ヶ月くらいしか生きられないと思います。短い時間ですが、家族の皆さんで大切に見守ってあげて下さい」と言いました。
お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな大声を上げて泣いてしまいました。
2日ほどは、みんなただただ泣いているばかりでしたが、お父さんが「この子には、たったの1ヶ月しか時間がないんだ。泣いてばかりで2日も無駄にしてしまった。この短い時間を幸せな人生にするようにみんなで頑張ろう」と言いました。
それからみんなは、女の子に一生懸命話しかけたり、歌を歌ってあげたり、手と足の体操をしながらみんなで笑い合ったりしました。
みんなはいつも笑っていました。頑張って、頑張って笑っていました。
3週間ぐらい経ったある日、いつものようにお母さんが女の子におっぱいをあげていました。いつもならお母さんが一生懸命話しかけても、ぼーっとした顔をしていた女の子が、お母さんの顔を見つめました。
お母さんは、ハッとして、「パパ ! 今、私の顔を見てくれたわ !」と叫びました。
お父さんがびっくりして女の子の顔をのぞき込むと、女の子は、今度はお父さんの顔を見て、ニコニコと笑いました。
「笑った ! 笑った ! 」お父さんとお母さんは大喜び。すぐにお医者さんを呼んで報告しました。
お医者さんは「すごい。信じられない。これは…助かるかもしれませんよ ! 」と叫びました。
その日からも、みんなは女の子に話しかけ、笑いかけ続けました。おじいちゃん、おばあちゃんも、ちょっとでも女の子が笑うと大騒ぎでした。
恐れていた1ヶ月が経ちました。
女の子はお母さんのおっぱいを飲む力も強くなり、体重も増え、顔もぷくぷくとしてきました。
お医者さんは、「ご家族皆さんの愛情と、この子の頑張る気持ちが奇跡を起こしました。今の体力があれば、大丈夫生きられます。大きくなったら手術が必要ですが、それも乗り越えることが出来るでしょう。病気を治すのは医者ではないということをこの子が教えてくれました」と言いました。
お父さんとお母さん、おじいちゃんとおばあちゃんは、頑張らなくても、いつもニコニコ笑っていられる毎日に感謝して、女の子を大切に、大切に育てました。
じゃ、おやすみ。


2022-07-23 08:10  nice!(0)  コメント(0) 
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指欠け地蔵さまの話 [作者のおすすめ]

ある雪ぶかい小さな村に息子とばあさまが住んでいました。
ばあさまは、すっかり足が弱ってしまい、外に出る事もできなくなっていました。息子は、そんなばあさまのために懸命に働いていました。
冬になり、村はすっかり雪に覆われました。
息子も、雪だらけの村では働こうにも働けず、南の町に働きに行きたくても、ばあさまひとりを置いていくわけにもいかないので、ふたりの家の食べ物は、どんどん無くなっていきました。
息子はせっせとわらじを編んで作りましたが、売りに行くあてはありませんでした。息子がため息を漏らしている隣で、ばあさまは体を小さくしながらも、いつもニコニコしていました。
「ばあさまは、のんきでいいなぁ」息子はそう思っていました。
雪はどんどん降り積もり、年が明けた頃には、本当に食べるものが無くなってしまいました。
息子は「このままでは、ふたりとも死んでしまう。なんとかこの村を出て、わらじを買ってもらおう」と決心し、ばあさまが起きる前に家を出ようとしました。
すると、久しぶりに開けた家の戸の前にお米が一俵置いてあるではありませんか。息子はびっくり。「誰かがオラたちのために届けてくれたんだ。ありがたや、ありがたや。でも、いったい誰が ? 」
息子が米俵の周りをよく見ると、人の足跡のようなものがたくさん残っていました。その足跡が点点と外に続いていたので、息子はその足跡をたどってみました。
その小さな足跡は村の外れまで続いていましたが、途中には転んだような穴ぼこや、米俵を置いて休んだらしい後がいくつもいくつも残っていました。
「重たい米俵を持って、この雪の中を歩いてくるなんて、大変な事に決まっている。そんな大変な思いをしてオラたちの家に米を運んでくれたなんて……オラも頑張って足跡をたどり、なんとかお礼だけでも言いたいものだ」
息子がそう思ってたどり着いた先は、村はずれのお地蔵様の前でした。
息子は大粒の涙をポロポロこぼし、お地蔵様の前で冷たい雪の中に頭まで突っ込んでお礼を言いました。
このお地蔵様は前から足の指が一本欠けていました。
ですから、お地蔵様は米俵を持って雪の中を歩くあいだ、何度も何度も転んだのでした。
息子は、お地蔵様のそんな姿を思い浮かべ、あまりのありがたさに全身が震えるほどでした。息子は、「お地蔵様。このご恩は決して忘れません。ありがとうございました。ありがとうございました」と言って、お地蔵様の足に自分が編んだわらじをはかせてあげました。
家に帰って、その話をしながらばあさまと米を食べました。
話を聞きながらニコニコと食べるばあさまの顔は、お地蔵様にそっくりでした。
じゃ、おやすみ。


2022-12-03 00:03  nice!(0)  コメント(0) 
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猫に恩返し [作者のおすすめ]

ある村に、一匹の、ものすごく記憶力の良い猫が住んでいました。
たとえば、ある人がこの猫にエサをくれたとします。するとこの猫は、その人のことをいつまでも覚えていて、食べ物に困ったらその人の所を訪ねて「にゃあにゃあ」なきます。
ある人がこの猫に石を投げたりすると、この猫はいつまでも覚えていて、その人の自転車のかごにゴミを入れたりします。
どの家で誕生パーティーがあるかを覚えていて、残り物のご馳走をもらいに行きます。つまり、カレンダーも読めるのです。
ある日、ひとりのおばあさんが道を歩いている途中、急に胸が苦しくなりました。しゃがみ込んで苦しそうに息をしています。それを見た猫は、おばあさんの家から少し離れた、おばあさんの息子の店に走っていきました。そして、店のまんじゅうをくわえました。
「あ、どろぼう猫!待てぇ!」息子は猫を追いかけます。猫はときどき振り返りながら、走っておばあさんのいる方へ向かいました。息子がおばあさんを見つけてすぐに病院に連れて行ったことは想像通りです。猫は安心して、盗んだまんじゅうを店に戻しました。
次の日、いつものように猫が村を散歩していると、村中の家の前に少しずつ、煮干しや焼き魚、かつお節などが置かれていました。猫はなんだか照れくさい気持ちになりましたが、仲間の猫たちに紛れるようにしてかつお節を食べました。村の人たちはいつまでも猫たちを大切にしました。
あの猫の記憶力も今まで通りで、そば屋の電話番号まで覚えているとうわさされています。
じゃ、おやすみ。


2023-01-03 22:47  nice!(1)  コメント(0) 
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