SSブログ

耳の短いウサギ その6 [耳の短いウサギシリーズ]

ある山に一匹だけ耳の短いウサギがいました。
本当はウサギは鳥のように1羽2羽と数えます。
耳の短いウサギは、またまた小学校にやってきました。今度はうんと遅い時間に、もう、真っ暗になってからやってきました。
校庭にはさすがに誰もいませんでしたが、体育館は電灯が点いて明るく輝いていました。
耳の短いウサギは体育館に行ってみました。
中をのぞいてみると、お母さんたちがたくさん集まって、楽しそうにバレーボールをしていました。
「お母さんたちならボクのことをかわいいって言ってくれるに違いない」
そう思って、耳の短いウサギは体育館の中へ入っていきました。
体育館の中は、お母さんたちの笑顔でいっぱいでした。
「楽しそうだなあ」とウサギがぼーっと見ていると、ひとりのお母さんが気付いてくれました。
「きゃー、かわいい」「何これ ? ウサギ ? 」「耳がちっちゃくてかわいい ! 」
お母さんたちは耳の短いウサギをもみくちゃにしてかわいがりました。
耳の短いウサギは幸せのまっただ中にいました。
「うちのチームのマスコットにしようよ」「いいわね」
「連れて帰りたい ! 」「何かエサなかったかしら」
お母さんたちは試合も忘れてウサギに夢中です。
耳の短いウサギは「よーし、今がチャンスだ。ボクがすごいってことを教えなくちゃ」と思いました。
試合は進み、あと1点取ればチームは勝ちそうです。
耳の短いウサギは、この時だ、と、ひとりのお母さんの手に勝手にタッチをして、コートの中に入っていきました。そして、高く上がったボールに向かってぱたぱたと飛び上がり、ぴょんぴょんする強い足でボールをアタックしました。
ボールはみごとに相手コートに突き刺さりました。
お母さんたちは大喜び。
「すごい ! 」「勝った ! 勝った ! 」「ウサギちゃんが飛んだ ! 」「信じられない ! 」「ばんざい ! ウサギちゃん ! 」
「やった。お母さんたちもボクのすごさをわかってくれた」
耳の短いウサギがそう思ったとき、審判がきっぱりと言いました。
「マスコットは試合に出られません。退場 ! 」
耳の短いウサギはがっかりして山に帰っていきました。
じゃ、おやすみ。


2022-01-21 17:22  nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:育児

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

  ※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
 

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]