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黄金のカブトムシ

むかしのお話です。
ある村のすぐ近くの山には「ものすごく大きくて金色に輝く黄金のカブトムシがいる」という伝説がありました。
たくさんの人がその虫を見よう、捕まえよう、と山に入りましたが、誰も黄金のカブトムシに出会った人はいませんでした。
ですから、だんだんと山に入る人も減り、カブトムシのうわさは忘れられかけていました。
さて、この村に仲の良い夫婦が住んでいました。夫婦は村が大好きで、とてもまじめに働いた他に、山に入っていった人たちが残していったゴミなども拾ったりして、自然を大切にしていました。
この夫婦に、待ちに待った子供が授かり、妻のおなかはどんどんふくらんでいきました。夫はそのおなかを見るたびに嬉しくなって、ますます張り切って働きました。
「今日は俺が山の掃除に行ってくるから、お前は家で休んでいろ」と優しい夫が妻に言いましたが、妻は、「大丈夫よ。こんなに大きくなったらいつ生まれたって安心だわ。私にも山のお掃除をさせてください。一人でいるより、あなたと一緒の方が安心ですし」と言ってついてきました。
妻は自分が腰掛けた切り株の周りのゴミを少し拾い、夫はその周りのゴミをずいぶんと拾い集めました。
「だいぶきれいになってきたなぁ。俺が子供の頃の山に戻ったようだ」夫は嬉しそうに言いました。
「本当ね。騒ぎが収まって、本当に良かったわ。もうすぐ暗くなるからそろそろ帰りましょう」と妻が答えたとき、妻が急におなかを押さえて苦しみ出しました。
夫はびっくり。「どうした ! 」と叫びました。
「う、う、生まれるぅーーーー」妻も叫びました。
「ひゃーーー。大変だ。どうしよう ! 」
「家まで、家まで、連れてって ! 」妻は言いました。
「わかった。さあ、おんぶだ」
二人分の重さの妻はとても重く、夫はヨロヨロしながら家に急ぎました。
でも、何をあせったのか、夫は道を間違え、家に帰る道がすっかりわからなくなってしまいました。
山はどんどん暗くなっていってしまい、とうとう真っ暗闇に包まれました。
夫は妻を背負いながら、「大変だ。どうしよう」と思いました。
その時です。真っ暗だった山の中に、こっちへ来い、と言うように光り輝く一本の道が現れました。夫婦は驚いて目をぱちくりしました。
「何だ ! これは !」と驚く夫に、妻は「この道のとおりに進みましょう」と落ち着いて言いました。
二人は光の道の中を、何の迷いも、不安もなく進んでいきました。
その道は二人を、山の中の一本の大きな木の元に導きました。
二人が大きな木を見上げていると、光の道が動き出し、大きな木が金色に光り輝き出しました。その光をよく見ると、それは大きな大きな黄金のカブトムシたちでした。
「これが黄金のカブトムシか ! 」夫はつぶやきました。
「おんぎゃあ ! 」その時、見事に大きくて元気な赤ん坊が生まれました。
二人は大喜びです。
すると、光はますます強く輝きだし、辺り一面黄金の光に包まれました。
その子供は大きくなって木下黄金丸(きのした こがねまる)と名乗り、いつまでもこの山の自然を守り抜きました。
じゃ、おやすみ。


2012-04-19 21:42  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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