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耳の短いウサギシリーズ ブログトップ
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湖に落ちたタヌキ(耳の短いウサギの話スピンオフ) [耳の短いウサギシリーズ]

さて、湖に落ちたタヌキは、びしょびしょになって岸に上がってきました。
「ふぅ、あの子が言ったように水に落ちるのはそんなに痛くなくて助かったけど、オイラは泳げないから、その後が大変だったなぁ」
ヘトヘトになったタヌキは、岸に上がって寝っ転がりました。
そして、深い深—い眠りにつきました。
目が覚めると、タヌキは手足を縛られて木にぶら下げられていました。
「うわっ、しまった。人間に捕まったんだ ! オイラのことを食べる気だな。どうしよう」
タヌキは縛られている縄をはずそうと、必死にもがきましたが、縄はなかなかはずれてはくれませんでした。
人間たちが近寄ってきました。薪を拾い集めて、そこに大きな鍋を吊そうとしていますが、鍋が大きすぎて吊すのに苦労しているようです。
仕方なく、少し小さめの鍋を吊し始めました。
「タヌキは大きすぎて無理そうだから、もう少し小さい獲物を食べようか」などと相談しているようです。
「やった ! オイラを食べるのはあきらめてくれるのかな ? 」タヌキはちょっと喜びました。
そこに、何も知らないウサギたちがぴょんぴょんと飛び出てきました。
「バカ ! そっちは人間が鍋をぶら下げて待っているのに ! 」タヌキはウサギたちがみんな捕まって食べられてしまうと思いました。
「やめろーーーーー ! 」タヌキは、ウサギたちを助けようと大暴れしました。すると、吊り下げられていた木がポキンと折れて、タヌキは地面に落ちました。
「何回も落っこちる日だな」とタヌキは思いましたが、そんなことはかまっていられません。手足の縄は取れないままで、タヌキは人間たちの方へ走っていきました。
人間たちは、飛んで火にいるウサギたちを捕まえようとしていました。
でも、ウサギたちは耳を伸ばして、パタパタさせると、空にふわっと飛んで軽々と逃げて行きました。
人間はびっくりして目をぱちくりさせていました。
そこに、「うぉーーー」と叫んでタヌキがやってきたので、「仕方がない、やっぱりタヌキを食べよう」と言って、追いかけてきました。
タヌキは、必死に森の中へ逃げましたが、手足を縛っている縄が邪魔でうまく走れませんでした。
人間が、もう、すぐそこまで追いかけてきたとき、タヌキの目の前の森が急に開けて、遠くの山まで見えてきました。
「今日は、やっぱり崖から落ちる日なんだな」タヌキはすぐに、自分の運命に気が付きました。もちろん、人間に食べられるのと、崖から落ちるのとどっちがいいかときかれたら、「崖から落ちる」と心に決めて、タヌキは今日3回目の崖からジャンプをしました。
「1日で3回目ともなると、崖から落ちるのも、結構気持ちがいいなぁ」とタヌキが思ったとき、よく見ると、タヌキの手足を縛っている縄を、数え切れないほどのウサギたちが必死につかんでいました。そして、ウサギたちが耳をパタパタさせて飛んでいるので、タヌキも大空を飛んでいるのでした。
「すごーーーーい。オイラ、空を飛んでる ! 」タヌキはふわふわと大空を飛びながら夢のような気持ちでいました。
ウサギたちはタヌキを草原に降ろして、前歯で縄をかみ切ってあげて、みんなでタヌキにお礼を言って帰って行きました。
タヌキは、そのウサギたちの中に1匹だけ耳の短いウサギがいたことに気が付きました。
じゃ、おやすみ。


2022-06-22 08:02  nice!(0)  コメント(0) 
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耳の短いウサギ その8 (奄美大島編) [耳の短いウサギシリーズ]

ある山に一匹だけ耳の短いウサギがいました。
本当はウサギは鳥のように1羽2羽と数えます。
耳の短いウサギは、空をパタパタと飛んで、奄美大島という島にやってきました。この島と隣の徳之島にだけ住む「アマミノクロウサギ」というとっても珍しいウサギが、自分と同じように耳が短いという話を聞いたので会いに来たのでした。
島と言っても大島と言うだけあって、奄美大島は結構大きな島でした。
耳の短いウサギはアマミノクロウサギを探しましたが、空の上からでは大きな木がたくさんあって見えません。山を歩いて探しましたが、アマミノクロウサギは1羽もいませんでした。
「さすが、珍しいウサギだなぁ。なかなか会えないぞ」と思い、島の動物にきいてみることにしました。
すると、「教えてあげてもいいけど、クイズにしちゃおうかな ? 」
「クイズ ! いいねぇ。楽しそう。出して、出して」
耳の短いウサギはクイズにしてくれるときいて、うれしくなりました。
「あのね、どうしてキミはアマミノクロウサギになかなか会えないのでしょうか ? ヒントは名前です」
「名前がヒントなの ? うーーん。……、わかった ! 「アマミ」だから海女さんのように海に住んでいるんだね ? 」
「ブ、ブーー。違います。ウサギは泳げません」
「うーーーん。……、クロウサギ……、黒いから土の中に住んでいるの ? 」
「ちゃんと、外を歩いていますよ」
「うーーん、降参 ! 」耳の短いウサギはあっさりと降参しました。
「クロウサギだから、真っ暗な夜じゃないと出てこないんだよ」
「あっ ! そうか ! だから、昼間は会えないんだ。ありがとう。夜になったら探してみるよ」
耳の短いウサギは、夜になるのを待ちました。
夜になり、辺りは真っ暗です。真っ暗な闇の中でクロウサギを探すのは大変です。
耳の短いウサギは、その短い耳を一生懸命伸ばして、クロウサギの気配がしないか探っています。
すると、何かの動物の鳴き声が聞こえてきました。
「何だろう。ウサギは鳴くわけないし……」と耳の短いウサギが思ったとき、「こんばんは ! キミ、誰 ? 」と突然言われました。
「うわっ ! キミこそ誰 ? 」ときくと、「ボクはアマミノクロウサギだよ。ボクに会いに来てくれたんでしょ ? 」と返事が返ってきました。
「キミがアマミノクロウサギか ! ボクが会いに来たことを知っていたんだね」
「うん、森の動物たちからきいていたよ。だから、ボク、鳴いてキミに知らせたのに……」
「えっ ? キミってウサギなのに鳴けるんだ」
「だからボクは珍しいウサギって言われているんだよ。でも、キミもボクたちみたいに耳が短くて珍しいね」
「ボクは耳の短いウサギ。よろしくね」
2匹はすぐにお友達になりました。
2匹のお話は、また明日。
じゃ、おやすみ。


2022-07-23 08:15  nice!(1)  コメント(0) 
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耳の短いウサギの話 その9 (奄美大島編) [耳の短いウサギシリーズ]

ある山に一匹だけ耳の短いウサギがいました。
本当はウサギは鳥のように1羽2羽と数えます。
さて、アマミノクロウサギと耳の短いウサギは、仲良く海の方に出かけました。
真っ暗な海でしたが、近くの中学生が花火をして遊んでいるのが見えました。
「火を使う人間は、ちょっと怖いね。気をつけよう」とアマミノクロウサギが言いました。
人間と遊び慣れている耳の短いウサギは、「平気だよ。一緒に遊ぼうよ」と言いました。
ふたりは中学生の方に近づいて行きました。
中学生は女の子3人と、男の子4人でした。
女の子のひとりが、「ウサギが来た。かわいい ! 」と言って耳の短いウサギを抱き上げました。耳の短いウサギは、うれしそうに手をパチパチしました。
男の子が「本当だ。かわいい ! 」と言って、アマミノクロウサギを抱き上げました。アマミノクロウサギはびっくりして、するどい爪で男の子をひっかきました。
「いててててて」男の子は泣きそうになりました。
周りの子たちは、「あはははは、アマミノクロウサギは爪がするどいんだぞ」と言いました。
女の子が耳の短いウサギのしっぽを「かわいい ! 」と言ってクニュクニュつかみました。
耳の短いウサギは、短い耳をピクピクさせて嬉しそうに笑いました。
男の子がアマミノクロウサギのしっぽをつかまえました。
アマミノクロウサギはびっくりしておならをプっとかましました。
周りの子たちは「あはははは、アマミノクロウサギのおならはくさいんだぞぉ。」と言いました。
女の子が「かわいい ! 」と言って耳の短いウサギを抱きしめました。
耳の短いウサギは嬉しくなって、耳をバタバタさせたので、女の子も一緒に空に浮かびました。
びっくりした男の子が、「俺も空を飛びたい ! 」と言ってアマミノクロウサギに抱きつきました。
びっくりしたアマミノクロウサギは、逃げながら男の子のおしりをガブっとかみました。男の子は「いたーーーい」と言って飛び上がりました。
周りの子たちは、「あはははは、それは空を飛んでいるんじゃなくて、飛び跳ねてるだけだぞ」と言って笑いました。
みんなは、耳の短いウサギに抱きついている女の子に抱きつきました。
耳の短いウサギが頑張って耳をパタパタさせたので、中学生たちはみんな空に浮かびました。
「わーー、すごい」
「夢みたい ! 」
「俺たち、空を飛んでる ! 」
中学生たちは大喜びしました。
ひとりの男の子が「そうだ ! 」と言って、ポケットから花火を取り出し、火を点けました。
花火はうつくしい火花になって地上に降り注がれました。
奄美大島の人たちはみんな、「こんなに美しい流れ星を見るのは初めてだ ! 」と言って大喜びしました。
アマミノクロウサギだけは、「あいつの方が、よっぽど珍しいウサギじゃん」と言いました。
じゃ、おやすみ。


2022-08-22 07:25  nice!(0)  コメント(0) 
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耳の短いウサギの話 その10 (奄美大島編) [耳の短いウサギシリーズ]

ある山に一匹だけ耳の短いウサギがいました。
本当はウサギは鳥のように1羽2羽と数えます。
さて、中学生たちと楽しく遊んだ耳の短いウサギでしたが、本当の目的のためにアマミノクロウサギたちに集まってもらいました。
耳の短いウサギはアマミノクロウサギたちに言いました。
「ボクたちウサギは、みんな空を飛ぶことができるのです。ウサギだけじゃなくて、ウマもクモもタヌキだって空を飛べるに決まっているんです。ボクはみんなと同じように耳が短いけど、中学生と一緒にだって空を飛ぶことができます。みんなも、この島にばかりいないで空を飛んで好きなところに行けるんです ! 」
「おおおぉぉぉ」アマミノクロウサギたちは耳の短いウサギの話に夢中になりました。
「でも、空を上手に飛ぶためには耳を伸ばす体操を頑張らなければなりません」
「おおおぉぉぉ」アマミノクロウサギたちは体操がしてみたくて、体がウズウズしてきました。
耳の短いウサギは、はりきって耳を伸ばす体操を教えました。
アマミノクロウサギたちは、一生懸命に体操をしました。
耳の短いウサギは、タヌキの時の苦い経験があったので、すぐに崖からジャンプさせたりはしないで、何回も何回も体操をさせました。
そのうち、アマミノクロウサギたちも耳の短いウサギもヘトヘトになってしまいました。
耳の短いウサギと友達になったアマミノクロウサギは思いました。
「耳が長くなったら、ただのクロウサギになっちゃうじゃん」
じゃ、おやすみ。


2022-09-22 10:30  nice!(0)  コメント(0) 
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耳の短いウサギの話 その11 (奄美大島編) [耳の短いウサギシリーズ]

ある山に一匹だけ耳の短いウサギがいました。
本当はウサギは鳥のように1羽2羽と数えます。
さて、耳を伸ばす体操を頑張ったアマミノクロウサギたちは、「次はいよいよ空を飛ぶ番だ」とワクワクしていました。
耳の短いウサギも、「ボクみたいに耳が短くても空が飛べるんだし、タヌキと違って、この子たちはウサギだから、もう飛べるかもしれない」と思いました。
そこで、どうせ飛ぶならみんなに見てもらおうと考えて、みんなを連れて奄美大島第一中学校に行きました。このあいだの中学生が応援してくれると思ったからです。
みんなでゾロゾロと中学校の校庭に入っていきました。
ピョンピョンではなく、ゾロゾロと行ったのは、アマミノクロウサギはピョンピョン跳べないからでした。耳の短いウサギは、そこがちょっと不安でした。
中学生たちはすぐにウサギたちに気が付いて、窓から「きゃー、ウサギがたくさん来た ! かわいい ! 」と言って、授業をほったらかして手を振ってくれました。先生も一緒になって手を振っています。
ウサギたちは、さっそく耳を伸ばす体操を始めました。
「かわいい !」
「ダンスしてるぞ ! 」
「おまじないじゃないか ? 」
「とにかくかわいい ! 」
中学生たちは大喜びです。先生は、「ビデオに撮ってテレビ局に知らせよう」と言ってカメラを出してきました。
ウサギたちは、耳の短いウサギの号令に従って、耳をパタパタさせました。
すると、みんなは、フワっと浮かび上がりました。
アマミノクロウサギたちは大喜び、見ていた中学生たちは目をぱちくりさせて驚きました。先生はカメラを抱えながら腰を抜かしていました。
耳の短いウサギとアマミノクロウサギたちは、校庭を覆うほどの勢いで空を飛び回りました。
中学生たちは、窓から体を乗り出すようにしてウサギたちを応援しました。
耳の短いウサギが、「せーの ! 」と言うと、アマミノクロウサギたちは、一斉に手に持っていた森の花を散らせました。
中学校は空から降ってくるたくさんの花に包まれました。
中学生たちも、夢を見ているようなすばらしい気持ちに包まれました。
耳の短いウサギは、「このあいだ、きれいな花火を見せてくれたお礼だよ」と言いました。
先生は、「みんな、ウサギは1匹2匹じゃない ! 鳥みたいに1羽2羽と数えるんだ、わかったな ! 」と叫びました。
中学生たちは、「はーーーい、一生忘れません ! 」と言いました。
じゃ、おやすみ。


2022-10-22 08:23  nice!(0)  コメント(0) 
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